それから15年くらい経って、購入した自宅のドア(3フロア合計7枚)やベランダの壁を塗った。モチーフにした色はAlvar Aaltoがデザインした結核患者用施設、パイミオサナトリウム。既存のペンキではビミョーな色が出なかったのでアップルグリーンとイエローを混ぜて、ネオンイエローみたいな色で塗った。二人目の子が生まれたときは、妻と赤子が入院している間に知人から譲り受けたベビーベッドを水色に塗った。使う塗料は独OSMO社のもの。エコ先進国のドイツらしく、同社の製品は植物油を主原料としており、食品と同レベルの安全性を誇る。外壁ならともかく、屋内に塗るものなのでいつもココのものを使っている。ちょっと高いけど…。
ちなみに写真でベビーベッドの後ろの壁に立て掛けてある(だれが描いたのか分からない)ショパンの肖像は道端に捨ててあったのを拾ってきたもの。拾い過ぎだろ。当時4歳の娘に「怖い」と不評だったので、後日処分した。ペンキ塗りの作業って、モチベーション高く始めるのはイイんだけど時間とともに段々とダルくなってきて、終いには「なんでこんなことやってんだ、俺?早く終んねーかなー」みたいな気持ちに変わる。だからこそBGMも必要で、チャーリー・パーカーなんかかけたりして、勢いを持続させる工夫をしてみる。まあまあの出来に仕上がると達成感はそれなりにあるから、そんな時は近所の居酒屋に夕方から出かけ、ひとりで祝杯をあげる。ビールではなく、ホッピーな気分だったりする。壁を塗る僕は、早く飲みたいから仕事を頑張る労働者のようだ。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。