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面白さで選ぶアウターコロンボ的コート

ペラペラのコートが好きだ。勿論、ズッシリと重たいコートも好きだが、中肉でしなやかなコートは好きじゃない。両極端だろうか。ペラペラのコートと言えば刑事コロンボこと、ピーター・フォーク。薄汚れたレインコートを羽織り、ヘロヘロのネクタイを首からぶら下げたコロンボが女優や医者、軍人、弁護士など社会的地位の高い容疑者を相手に、人を喰ったような態度で「実はうちのカミさんがね…」なんて言いながらジワジワと追い詰めていく、あの格好よさ。自伝に依れば、あのコートはピーターの自前だとのこと。シリーズのスタート時、コロンボ用に揃えられた衣装が気に入らず、自宅の2階にあった着古しのレインコートを自ら持ち込んだらしい。更にコートの色に合わせて、白×ブルーのサッカー地のスーツ(夏物)を衣装係に頼んでくすんだ茶色に染めさせたそうだ。この徹底ぶりで完成したのが、ペロペロのコロンボルック。この、うだつの上がらなそうな風体に油断させられた知能犯たちが、その後まんまとコロンボの罠にかかり窮地へと追い込まれていく…。ちなみにピーターは自伝でこうも言っている。「ホームズはテーラーメイドの英国産ツイードで洒落てるが、コロンボのコートは要洗浄もしくは要焼却」って(笑)。僕の手持ちで要焼却なくらいボロいのが15年前に買った Frank Leder のコート。玉虫色に鈍く光るヴィンテージ生地を使ったコイツは新品の時からまるで古着みたいだった。更にこれを着て、ロンドンもオーストリアもパリも旅したから今やヨレヨレのヘロヘロ。ボタンもよく落ちる。合計10回はつけ直したと思う。今もひとつは外れたまま。毎年10月頃になると、これをペロッと羽織る。ちなみに Frank Leder の洋服は新品の状態では未完成品らしい。これはデザイナー本人が言っていることで、ボタンをつけ直したり、シワが入ったり、色が落ちたり、破れたら縫い直したり…。それで初めて所有者にとっての「完成品」となるらしい。裏地にはフランク本人に書いてもらった直筆メッセージが。ペラペラの外側で内側の大事なものを隠している感じも含め、なかなかコロンボ的でしょ(笑)?いやいや、ドイツ人デザイナーとアメリカの刑事じゃ、何も共通点ないじゃん!無理矢理だろ!って?実はピーター・フォークはコロンボ刑事になる前は天使だったのだ。ジーゲスゾイレのふもとでベルリンの現役天使にハッキリとそう「自白」しているのだから。