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2018年秋冬、注目のファッション -内在する普遍性-靴の彫刻

靴は履いてみなければわからないものだけれど、これだけは実物でも写真でもなく、図面を見せられた瞬間から「買わなけばならない」と直感してしまった。ビスポーク靴職人の深谷秀隆さんが手がけるブランド、イル・ミーチョのウイングチップ・・・いや、ブローグシューズである。だって片一方はウイングチップだけど、もう片一方はウイング状になってないわけで・・・一目瞭然ではあるが、つまりは左右非対称なのだ、これ!
深谷さんといえば2015年にフィレンツェの美術館で『靴の彫刻』をテーマにしたアート展を開催。ぐにゃぐにゃに歪んだ靴や球型の靴やら、ぶっ飛んだ靴の数々にびっくりしたものだが、この靴が持つ作家性は、まさしくそれらの延長線上にある。単なるアシンメトリーじゃなく、美しく歪んだその靴は、たとえ履けなくてもそれはそれでいいや、と思ってしまうほど美しいのだもの。
とはいえこの靴、意外なまでに実用性は高いので、やはり履かずに飾っておくにはもったいない。僕の大好きなファクトリーでつくられているだけあって履き心地は抜群だし、木型が素晴らしいから僕の小さな足でも寸詰まりに見えない。しかも流麗なロングノーズなのに、意外にもスーツのみならずデニムやワークパンツなどのカジュアルな装いにも合うから、必然的に出番も多くなりそうだ。果たして周囲の人が気づいてくれるかどうかはわからないが、アンダーソン&シェパードのグレーフランネルスーツに合わせたらきっともう、エクスタシーものだろう! 究極の正統と異端って感じで。
実はこの靴、トゥモローランドの40周年記念アイテムでブラックのみの展開。僕は本来黒い靴って苦手なのだが、このアプローチならやはりシンプルな黒が正解かな、と思い購入した次第。
しかし、やはり・・・ブラウンのカーフやスエードを纏ったこの靴が見てみたい。かなりの偏屈者で知られる深谷さんだから難しいことはわかっているが、限定なんてもったいつけずにぜひ次回作、つくってくれないかなあ?