深谷さんといえば2015年にフィレンツェの美術館で『靴の彫刻』をテーマにしたアート展を開催。ぐにゃぐにゃに歪んだ靴や球型の靴やら、ぶっ飛んだ靴の数々にびっくりしたものだが、この靴が持つ作家性は、まさしくそれらの延長線上にある。単なるアシンメトリーじゃなく、美しく歪んだその靴は、たとえ履けなくてもそれはそれでいいや、と思ってしまうほど美しいのだもの。
とはいえこの靴、意外なまでに実用性は高いので、やはり履かずに飾っておくにはもったいない。僕の大好きなファクトリーでつくられているだけあって履き心地は抜群だし、木型が素晴らしいから僕の小さな足でも寸詰まりに見えない。しかも流麗なロングノーズなのに、意外にもスーツのみならずデニムやワークパンツなどのカジュアルな装いにも合うから、必然的に出番も多くなりそうだ。果たして周囲の人が気づいてくれるかどうかはわからないが、アンダーソン&シェパードのグレーフランネルスーツに合わせたらきっともう、エクスタシーものだろう! 究極の正統と異端って感じで。
実はこの靴、トゥモローランドの40周年記念アイテムでブラックのみの展開。僕は本来黒い靴って苦手なのだが、このアプローチならやはりシンプルな黒が正解かな、と思い購入した次第。
しかし、やはり・・・ブラウンのカーフやスエードを纏ったこの靴が見てみたい。かなりの偏屈者で知られる深谷さんだから難しいことはわかっているが、限定なんてもったいつけずにぜひ次回作、つくってくれないかなあ?
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。