シルクのストールというとなんとなくしゃらくさい感じもするが、エルメスの「ディップダイ」シリーズなら話は別である。その名の通り製品染めが施されているので、発色が鮮やかすぎず、ヴィンテージテイストなのだ。季節を選ばずどんな装いにも合うので、僕は価格には目をつぶり、こいつの90㎝角の中判サイズをハードに使い込んでいる。ファッションとしてのおしゃれさはさることながら、飛行機やバイクに乗る時には三角巾の要領でマスク代わりにすると、とても心地よい。昨年モロッコの砂漠を旅した時はターバンがわりに使ってみたのだが、現地のベルベル族が被っているコットン製の本物のターバンよりも、ずっと快適だった。まあエルメスのシルクツイルはほかと較べると断然ヘビーウェイトだから、こういった使い方ができるのだが。
あまりに使い込んでいるからおそらく汗や皮脂や鼻水が染み込みまくってすごいことになっていると思われるが、見た目にはまったく汚れが目立っていない点も嬉しい限り(その分、加齢臭は半端じゃないが)。いわゆるブランドものが苦手な人にこそ、使ってもらいたい男の1枚である。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。