「ツルちゃん。どもども〜。なんか、こんなときばっかメールするのも気が引けるけど…(笑)。モロッコからストールを100本ぐらい買ってきてて、週末、渋谷で売っているから、もし、お時間あったら見に来てよ。『モード』じゃないけど、モノは凄くいいよ。ずっと愛せる感じ。ちょっと見て欲しいなぁ。」って、今から5年前の春に、旧友から届いた軽~いメッセージ。「久々に顔でも見に行くよ」と返信した僕は、休日に並木坂の展示会場へと足を運んだ。案内のままにビルの一室へ上がってみると、件のストールがズラリと並んでいる。「久しぶり~」なんつって友人との挨拶をソコソコに済ませ、いざ商品を手に取ってみると独特の表面感、光沢、手触り。友人いわく「カクタスシルクと呼ばれるサボテン繊維とラクダの毛で織られたもの」だという。J.P.ゴルチェもこの工房にストールを買いにきたらしい。横縞模様が多く、地平線や夕焼けなどの自然からインスパイアされた柄出しなのかしら?などと思いながら、気に入った配色のものをひとつ購入した。実際に使ってみると、キャメルヘアーらしきフカフカの部分は割に温かく、季節の変わり目にサラッと巻くにはちょうどいい。昨年の春には巻くだけでは飽きたらず、ベルトを使って体に纏い、さらにインド製ブロックプリントのストールや Hermès のプリントタイを重ね付け。柄嫌いの人が見たら蕁麻疹が出てしまいそうなほど、クドいパターン・オン・パターンで遊んだりして。ちなみにこの友人の実家は寺。寺…なんだけど、同級生グループみんなと境内でバーベキューしたり、本堂に故・立川談誌を招いて落語会を開いたり、実家の「はなれ」は僕ら同級生の溜まり場だったり、いま思えば変な寺だったな…。彼とは高校生時代のクラスメートで「ゴルチェがどーの、ギャルソンがどーの」と、洋服の話をしていた数少ない友人のひとりだった。ともに上京後、社会人になってからは数年に一度しか会わなくなった。彼がいま本業で何をやっているのかはよく知らないが、副業(?)でクラブや野外でのイベントをオーガナイズしていることは知っている。MMW などのトンでるジャムバンドから水曜日のカンパネラまで幅広く招聘し、妖しい活動を続けているようだ。モロッコ、音楽、ファッション。これらに共通して言えるのは「日常からの解脱」。サンローランやゴルチェがモロッコを訪れた理由もそんなところだろう。つまり、音楽やファッションなんて、基本的には「ケシカラン」ものだと僕は思っている。良い子は真似しないでね、だ。これは7代目立川談誌が唱えていた「イリュージョン」にも通ずると思う。だって、日常にべったり張り付いたままでは僕ら、生きられないんですよ、所詮。勿論、これは平和ボケした都会っ子の贅沢病なんですけどね。
REVIEW
手元で馴染んだオーダー品
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
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買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
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90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
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80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。
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