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AMVAR が選ぶ、今ちょうどいい Amvai Item - 2018年2月日本の母達の手による1940‘s American Red Cross のセーター解析。

今日はスゴい体験をした。と言うよりもの凄い勉強をさせていただいた。事の発端はスロウガン20周年プロジェクト用で、70年前に作られた手編みのセーターをデッドストックで手に入れたことからだった。詳細は後報させていただくとして、とにかく謎の多いこのセーター、まずは編み方の技法を押さえ、さらに不思議な味わいの源を突き止めたかった。ボクは今まで何度か手編みのセーターをスロウガンで企画したものの、なかなか思い通りにはいかなかった。手編みというとインバーアランやカウチン、ガンジーなんかが頭をよぎりますよね。コストもそれなりのお値段を覚悟しなければならないので、企画段階で THE 手編みみたいに色々な要素を盛り込みたくなってしまうんです。でもそんなスゴいセーターのサンプルが出来上がって来てもあまり心は動かなかったんです。イギリス製とかスコットランドがどうしたとか、そんなことばかり気になってそれを模したセーターを頑張って作ったって何も楽しい気分になれなかったのだ。しかしながら、今回の、このデッドのセーターを手にした時、体中に電気が走った。決して上手ではないが、未だ見ぬ誰かの暖かさのために無償で作られたこの1着からは何かが漂っている・・・。
このセーターは、新プロジェクトの核になるアイテムですのでここではサラッと。実はこの逸品は第二次大戦中、素人の方が一生懸命にボランティアで作った1着なのです。極北の地で戦う兵士達が寒い思いをしていないか?私たちに出来る事はないのかとアメリカの母達は考え1917年から始まったボランティア事業から生み出された物なのです。工業製品としての古着の出所由来を解析するのは得意なボクですが、道具は棒針のみ、作者はボランティアのお母さんとなるとどうしても解らない事が多くなる。個性、個体差などもあり、真偽も分かりづらいのだ。なにせ手作りなのだから。そこでボクはひらめいた。正解への鍵は、実は身近な所にありそうなことを。実家には編み物教師を30年続けた母がおり、そして近所にはその母が師と仰ぐ、手編み歴60年のマイスターがいらっしゃるのだ。ボクが幼稚園の頃、そのおばちゃんの毛糸屋さんで何度か遊んでもらった記憶がある。そして、2人の手編み職人の母達はボクが持ち込んだ70年越しの疑問に的確に答えてくれた。謎めいたディテールには全てに理由があった。70年前の作者の利き手や手さばきのクセまで言い当てていた。おばちゃんとは実は幼稚園卒業以来だから45年ぶりの再会だった訳で、ボクの質問に答えてくれる度に「マナちゃん・マナちゃん」と連呼され、おばちゃん、俺も今年、52だよ!なんて言ってみたものの、マナちゃん連呼は止まらなかった。わずか90分の母たちの解析授業は瞬く間に終ってしまった。着てくれる人の喜ぶ顔を思い描きながら一針一針編み上げるセーターからは、とてつもないオーラが漂う。それは1940年代も今でも変わりなく、そのセーターが暖かさにはたくさんの意味がありそうだった。