さておき、若い頃に雑誌の特集で目にしたアントワープにあるドリスの旗艦店・ HET MODEPALEIS が脳裏に焼き付いてた僕は、その数年後にアントワープへ旅しました。実際に見る HET MODEPALEIS は100年以上前に建てられた繊維取引所をブティックに改装したというクラシックな佇まいで、古き良き時代の面影をあちこちに残すアントワープの旧市街と完全にマッチしていました。そういえば、15年前まで青山にあったドリスの旗艦店(当時並びの Blue Note Tokyo と同じくライカが運営していました)も蔦の絡み付いた古い洋館さながら、無駄にモダナイズされていない素敵なお店でした。18年前にその店でフューシャピンクにミントグリーンのストライプが入ったセミフレアパンツを買った思い出があります。初めて訪れたアントワープのブティックでは自分用にシルクジャカードが美しい金色のペイズリータイ、(当時はまだ結婚前だった)妻への土産に FREDERIC MALLE の香水を買いました。このネクタイは15年近く経った今でもお気に入りです。先日、僕の誕生日に妻から送られたプレゼントは両胸にフラップポケットが付いたドリスの白シャツ。洗いのかかったタイプライタークロスで、シワシワの質感、小ぶりの襟。グレーフランネルのスーツにウールタイで合わせたくなる「いなたい」雰囲気は実に僕の好みの的を得たもので、10年後もこのシャツを着ていたいと思えました。2000年前後から激化したファッション業界の M&A (合併、買収)の荒波。 Alexander McQueen や Helmut Lang ら、当時の超一流デザイナーたちが自身のブランドを身売りしていく中、今も巨大資本の傘下に収まることなく自らが経営者としてチームをまとめるドリス。このコラムはむやみにドリスというブランドを礼賛するためのものではありません。服の好みなんて人それぞれですが、本作を観て感じたのは「続ける」ことの素晴らしさ。30年以上もの間、ファッションデザイナーを続けるということ。単なるファッションの映画として、ではなく一人の人間の生き方として是非ご覧になってみてください。
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