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STORY

ごめんね、ザンス

フランスにおけるパンツメーカーの雄、Bernard Zins(ベルナール ザンス)。6月に入り、すっかり蒸し暑くなってきたので、タンスの奥底に眠っていたZinsのショートパンツを引っ張り出してみた。15年前に買ったこのショーツはZinsがまだ「フランス製」だったころのもので、当時はアメリカ人デザイナー・Michael Tapia(マイケル タピア)がディレクションを手がけていた。Michael Tapiaといえば自らのコレクションをパンツのみでスタートさせたという、自他共に認める「パンツの鬼」。フランスの老舗パンツメーカーの監修も、当然のごとく彼に白羽の矢が立つわけだ。

2005(2006?)年製のショーツはInternational Gallery BEAMSとのダブルネーム。いわゆるバミューダタイプだが、内側にサスペンダーボタン、フロントにはプロングループ(ベルトのピンを通すループ)が付いていたりと、ショーツなのに本格的なディテールが満載。Tapiaのクラシシズムを感じることができる。はずなんだけど、フロントは何故かジップフライ?ここまでクラシックに走れば、ホールを斜めに切ったボタンフライになっていてもおかしくないのに。

Zinsといえばフランスの高級メゾンのパンツを数多く手がけてきたことでも有名だが、やはり専業ブランドである以上、避けては通れない名前がHemisphere(エミスフェール)。チマヨベストやスコットランドのセーター、ハンディキャッパー用のレザーシューズと共に英・Chester Barrieの重衣料を売っていた同店は、80年代のある時パンツ部門の取り扱いを刷新、Bernard Zinsにパンツ生産を依頼することに。その際、ピエール・フルニエ氏は自分の店で売っていたChester Barrieのパンツをサンプル(お手本)としてZins社に預けたのだそうだ。これって、よくよく考えたらスゴい話で、スーパーの店長がコカ・コーラをペプシ社に渡して「こんな味にして、うちのために作ってくれ」と注文したような感じ。これでHemisphereのために英国風のパンツを生産して納めたZinsって偉い(笑)。最近だと日本の某セレクトショップのためにDickie's型のパンツを作ったというから、懐が深いというか心が広いというか…。

そうそう、Michael Tapiaの最初のコレクション(パンツのみの展開)では、その生産を請け負っていたのがChester Barrieなので、Tapia期のBernard ZinsはChester Barrieでなんとなく繋がっていることになる。英・リバティ社の小花柄プリントにアメリカ的合理主義のジップフライを搭載した、フランス製のこのショーツはTapiaのバランス感覚の賜物だろうか。

ちなみに僕が穿いているこのショーツ。普段は38や40で穿けるZinsのパンツを2~3サイズアップの44で購入している。ガバガバのウエストをウエスマン部分で2サイズ分小さくして、その下はフロントに1インプリーツを入れて調整した。15年前の当時はジャケットもパンツもタイトフィット全盛。このショーツも普通に穿けばかなり細身のはずだった。が、そこは天の邪鬼。シャツ生地のフワッと軽い感じを生かした緩めのフィッティングに、サイズ選びとお直しで無理やり改造してしまったのだ。結果的に2020年に再び穿いてもおかしくないバランスのまま、長い間タンスの奥底で冬眠していたことになる。そもそも英米仏のミックスだったショーツを、さらには日本のショップ店員にまでイジリ倒されちゃって、なんだかごめんね、Bernard Zins。それでもやっぱり、大好きだよ。

Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。