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STORY

そのパンツ、フレンチにつき

「Zins のスラックスに足を通すと、フィット感の良さから脱いだばかりのスラックスの存在を忘れてしまう」

モードの帝王イヴ・サンローランも称賛したフランスのパンツ専業メーカー Bernard Zins の名前を、僕は18年前のビームス入社時に初めて知った。22歳当時、パンツ屋と言えば高校時代に高級チノパンとして覚えた Barry Bricken や大学時代にドレステリアで買った Incotex だった。新人の僕は「エルメスやサンローラン、フランス製のヨウジなど、有名ブランドのパンツを下請け生産しているメーカーだ」と、売り場に並んだパンツを見ながら先輩に教わった。創業者の Bernard は若い頃に留学した戦後アメリカでパンツ製造技術を学んだという。確かに Bernard Zins のパンツにはどことなくアメリカンな匂いがした。クラシコのパンツに比べるとS字に曲げたりしないし、シートピースもパンチェリーナも無い。いかにもな「テイラーメイド的ディテール」は見事に省かれていて、なんならディッキーズやスタプレを超高級に作っているかのような素っ気なさ。それでいて、抜群にエレガント。それが Bernard Zins の印象だ。

入社当時に初めて買った Zins のパンツ。Made in France。カシミア15%ブレンド。当時はこれに生成りのカシミア製ショルダーボタン付マリンセーターを合わせて着たりしていた。

マイケル・タピアが Zins のディレクションを手がけていた時期のものを含めて10本近くは買ったと思う。後輩に随分あげたりしたので、今では2~3本しか手元に残っていない。最近、久々に18年前のパンツを穿いてみた。


相変わらずいいパンツだと思えた。いまパンツ業界のトレンドはイタリア主導の英国テイストで、ディテールも説明っぽく、かなり濃い味になっている。それに比べてフランス製の Bernard Zins は「グレーのセーターにジーンズを穿いてるだけなのにメチャクチャ雰囲気がある都会っ子のアイツ」みたいな佇まいだ。残念ながら、10年ほど前に工場も変わり Bernard Zins はフランス製ではなくなってしまった。

タッセルスリッポンやトラッカージャケット、小花柄プリントのシャツなど、ポール・ウェラー的アイテム群と合わせてコーディネート。色使いで個性を出した。

もちろん現在の Zins も十分にクオリティコントロールされているものだとは思うが、洋服そのものが発する「雰囲気、感じ、ムード」みたいなものは口では非常に説明がしづらい。特にフランス服。それはヌーベルバーグ映画のどこが面白いのかを人に説明しづらいことに似ている気がする。

Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。