2005(2006?)年製のショーツはInternational Gallery BEAMSとのダブルネーム。いわゆるバミューダタイプだが、内側にサスペンダーボタン、フロントにはプロングループ(ベルトのピンを通すループ)が付いていたりと、ショーツなのに本格的なディテールが満載。Tapiaのクラシシズムを感じることができる。はずなんだけど、フロントは何故かジップフライ?ここまでクラシックに走れば、ホールを斜めに切ったボタンフライになっていてもおかしくないのに。Zinsといえばフランスの高級メゾンのパンツを数多く手がけてきたことでも有名だが、やはり専業ブランドである以上、避けては通れない名前がHemisphere(エミスフェール)。チマヨベストやスコットランドのセーター、ハンディキャッパー用のレザーシューズと共に英・Chester Barrieの重衣料を売っていた同店は、80年代のある時パンツ部門の取り扱いを刷新、Bernard Zinsにパンツ生産を依頼することに。その際、ピエール・フルニエ氏は自分の店で売っていたChester Barrieのパンツをサンプル(お手本)としてZins社に預けたのだそうだ。これって、よくよく考えたらスゴい話で、スーパーの店長がコカ・コーラをペプシ社に渡して「うちのためにこの味で作ってくれ」と注文したような感じ。これでHemisphereのために英国風のパンツを生産して納めたZinsって偉い(笑)。最近だと日本の某セレクトショップのためにDickie's型のパンツを作ったというから、懐が深いというか心が広いというか…。
そうそう、Michael Tapiaの最初のコレクション(パンツのみの展開)では、その生産を請け負っていたのがChester Barrieなので、Tapia期のBernard ZinsはChester Barrieでなんとなく繋がっていることになる。英・リバティ社の小花柄プリントにアメリカ的合理主義のジップフライを搭載した、フランス製のこのショーツはTapiaのバランス感覚の賜物だろうか。
ちなみに僕が穿いているこのショーツ。普段は38や40で穿けるZinsのパンツを2~3サイズアップの44で購入している。ガバガバのウエストをウエスマン部分で2サイズ分小さくして、その下はフロントに1インプリーツを入れて調整した。15年前の当時はジャケットもパンツもタイトフィット全盛。このショーツも普通に穿けばかなり細身のはずだった。が、そこは天の邪鬼。シャツ生地のフワッと軽い感じを生かした緩めのフィッティングに、サイズ選びとお直しで無理やり改造してしまったのだ。結果的に2020年に再び穿いてもおかしくないバランスのまま、長い間タンスの奥底で冬眠していたことになる。そもそも英米仏のミックスだったショーツを、さらには日本のショップ店員にまでイジリ倒されちゃって、なんだかごめんね、Bernard Zins。それでもやっぱり、大好きだよ。













