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STORY

フイルム畑でくだ巻いて(ウディ・アレン編①)

「いやー、在宅ワーク、やってる?」「やってますよ、先週から」「だよな、でも自宅でやれることにも限りがあんじゃん?ぶっちゃけ何やってんの?」「映画観てます」「うちら服屋だからファッション的自己啓発とか、なんだかんだ理由をつければ映画鑑賞も立派な在宅ワークだもんな。で、昨日は何観た?」「『アニー・ホール』」「出た」「なんすか、出たって」「ま、お決まりだよな。で、なんで?」「いや、なんで?って…いま世の中的にもアイビー/プレッピーがリバイバルしてるし、好きなんすよ、ウディ・アレン」「ウディはアイビー/プレッピーなのか?」「え…いや、そうじゃないんすか?」「公立の高校時代からラジオ番組にハガキを送り続けるギャグライター志望だったらしいし、ニューヨーク大学もサボって中退してる。家系もロシア=オーストリア系のユダヤ教徒だから、アイビーリーグど真ん中のWASPとはかなり距離があるな」「有名私立のPreparatoryじゃない、ってことすか。そう厳密なこと言われても…」「ボタンダウンシャツやツイード、チノパンの着こなしとか、か?」「まぁ…」「ウディは着てそうであんまり着てないよな、B.Dシャツ。たまに着てるけど、むしろペラペラのレギュラーカラーが多い。そもそも自分の身をハイカルチャー側に置くことを避けてきたタイプの人間なんだから。悪びれもせずに爽やかな笑顔で『文武両道エリートです!』みたいな顔をするわけないだろ。もっとツイストしてんだよ、人格が。実際『アニー・ホール』の中でもハーバード大のことを『キッシンジャーが教授の三流大だ』と言い放っている」「そっかぁ、なんとなくイメージで見てましたねぇ」

 
「ほんとに好きなのか?ウディ・アレン」「結構観ましたよ、『ミッドナイト・イン・パリ』とかロンドン三部作とか…」「俺は好きじゃない」「え?」「厳密には、まだウディ・アレン好きだとはとても言えない」「そーなんすか?」「ちょっと前に彼のフィルモグラフィーを本か何かで見たんだ。1965年から2016年の『カフェ・ソサエティ』までの間に何本撮ってると思う?」「30本くらいすかね?」「馬鹿野郎!66本(出演のみも含む)だ!年に一本以上のペースで撮ってるんだ!」「すげー。しかもほとんどが監督・脚本・出演…」「そう!で、俺が2016年の時点で観たことあるのを数えたら31本しかなかった。半分も観てないわけ!そして今も撮り続けてる」「いや、でも十分観てるんじゃ…」「世の中には当たり前のように全作品観てるファンがいるんだ。だから俺は、『好きなんです~ウディ・アレン~、なんかお洒落ですよね~、プレッピーな感じ~』なんてとても言えないんだよ。貴様と違ってな!」「いや、そんなこと言ってないし…貴様だなんて(苦笑)、パワハラで訴えますよ!」「ウディなんて実際に訴えられてるんだ!告訴が怖くてファンやってられるか!」「(やっぱファンなんじゃん…)」

ウディ・アレン編②に続く。
Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。