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STORY

ぼたんあそび②

既製品の袖モノを買うとき、愉(たの)しみのひとつに「お直し」がある。スーツの場合はパンツの裾上げ、ジャケット袖丈の出し/詰めが最低限。店員が聞いてくるポイントは「裾はシングルとダブルどちらにしますか?」と「袖ボタンはいくつ付けますか?」が基本型(※切羽を開ける開けないはオプションだとして)。注文服の場合は何も指定しないと、そのアイテムに相応しいハウススタイル仕様で勝手に上がってくる。ビスポークの場合、スーツ(3ピース及びJacket&Trousersの2ピースも含む)は袖ボタン四つ、スポーツコート(上着単品)の場合は袖ボタン三つがノーマルだ。例外としてブレザーは上着単品の中でもドレッシーな位置付けにあるので、袖ボタンは四つ付く。で、今日の話題はボタンの数とボタンホールのスタート位置。

写真はFallan&Harveyでビスポークしたブレザーの袖口。スリーライオンのメタルボタンが四つ、袖先から3.0cmの位置に最初のボタンホールが切ってある。イタリアを中心としたグローバルスタンダードでは袖先から4.0cmが多く、イタリア南部のスタイルだとボタン同士のエッジを重ねて付ける場合が多い。ちなみにブレザーの中でもニューポートなアメリカンスタイルでは袖ボタン二つ、ボタンとボタンの間を1.5cmほど開けたものが多いのはご存知のとおり。

写真右は1990年代のRomeo Gigli、シェットランドウールのツイードが放つ緑色が眩しい。左は2006~7年頃のCLASS。アザラシ毛ブレンドのデッドストック生地を使った一着。ともに袖ボタンはひとつ。ツーパッチポケット、フロントは四つボタンでラペルに付いた五つめのボタンを留めればギリーカラーに変形するこのスタイルは1900年前後のラウンジジャケットを模したもの。

で、2019年末に買ったInternational Gallery BEAMSオリジナルのスーツ。英・Fox社のフランネルを使用したコンテンポラリーなフィッティングのモデル。袖ボタンのスタート位置は3.5cm、ボタンとボタンの間を0.2cmずつ開けて三つ付けてみた。個人的な意見だが、ボタン間隔を開けると「スポーティー」に見える、開けずに並んでいると「普通」に見える、ボタン同士が重なっていると「カッコつけて見える」と思う。ボタンの数は当然、多い方がクラシックorドレッシーな見え方になる。

ということで、袖口三つボタンのチェックフランネルスーツには、なんちゃってホックニーなファンシースタイルで臨む。T&AのダブルカフスシャツにSwatchというダサさ。キャップはMello Yello。

以下余談。10年以上前、前任バイヤーSは店にスーツを買いに来ると、毎度対応していた僕が「袖ボタンはいくつ付けますか?」と聞く度に「付けられるだけ付けてください!」と返事していた。いや、普通にスペアひとつを含めて9個付属してるんだから、左右四つずつってことね、分かりずらいなぁ(笑)と当時は思っていた。が、数年後にふと気づいた。ボタンの数とか間隔がどーのこーの、その会話事態がダサい!って、彼は言いたかったじゃなかろーか???って。たしかに、買い物って細かいこと言わずにテキトーな感じでした方が気持ちいいし、スマートに見えるもんなぁ。つまり、余裕をもって遊ぶ、ということね。

Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。