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STORY

本気の伊達眼鏡

先日、メガネを新調した。
メガネ、と言っても僕にとっては伊達眼鏡。コンタクトレンズを着用した上から、実用でなくあくまでファッションとしてクリアレンズ眼鏡をかけているに過ぎないのだが。
MATSUDA(マツダ)は1980年代のDCブランドブームを牽引したニコルのデザイナー、故・松田光弘氏が1989年に立ち上げたアイウェアブランド。鯖江市の熟練職人たちによる超絶技巧を駆使した、「美術品のように繊細な彫刻」的アイウェアとして世界にその名を知られている。

今回手に入れたのは角に丸みのあるオクタゴン(八角形)タイプ(※写真は新品時のため、まだレンズにロゴステッカー付き)。フレームのそこかしこにはMATSUDAの真骨頂とも言える複雑な彫金模様が施してある。また、パーツもスゴい。一般的な眼鏡は生産効率を上げるためテンプル、モダン、クリングスなど、同じ各パーツを複数のモデルに対して使い回していくのだが、MATSUDAのアイウェアは1モデルに対してすべてのパーツのデザインを一から起こしていくらしい。しかもその鋳型は熟練職人の手彫り。いまや眼鏡の話になると鯖江の名前が容易に出てくる時代だが、MATSUDAからは鯖江の本気が感じられるし、どのモデルを見てもオリジナリティ溢れる仕上がり。神は細部に宿る、とはこのこと。圧倒的にこだわり抜いたディテールの集積が〝素人がパッと見ても何となくスゴさが伝わる全体感〟を生み出している。「時間とコストをかけて作る」というモットーで生産されるMATSUDAのアイウェアは、そのテマヒマ故に平均的ブランドの3倍、高級ブランドの2倍というプライスレンジになってしまうが、効率良く見た目を整えたアイウェアとの差は歴然、というか別次元にある。

チタン製のこのモデルは非常に軽くてかけやすい。フィッティングも僕に合っていて、毎日かけてもストレスがほぼない。最近メタルフレームのクリアレンズが気分で、この半年はMATSUDA×2、別ブランドのもの×1をその日のコーディネートに合わせて使い分けている。

こちらは昨年(2018)秋に購入したモデル。フラットミラーレンズのサングラスだったものをクリアに入れ替えて使っている。故・松田氏自身も愛用していたデザインで、同ブランドのなかでもクラシックな位置付けのもの。かなり個性的だが、これをかけていると同業者やスタイリストなどのファッション関係者によく誉められる。「どこの眼鏡?」「それってヴィンテージですか?」など。物凄く特徴的なデザインの服を着ていて、ブランド名を一発で当てられたりすると恥ずかしいものだが、MATSUDAのアイウェアはデザイナー名も時代も判別がつきづらいらしい。これは素晴らしいことだと思う。時代(30's、70's、90's、現在)も国籍(英国ジェントルマン、フレンチシック、アメカジ)も場所(ストリート、モード)も不明な僕の着こなしにピッタリ。また、定型文のスキマをスルスルと避けながら進む僕のフェイクスタイルに絶対的な「ホンモノ感」を付け足してくれる意味でも、なかなか他に替えがないアイテムになってしまっており、ナイロン素材やレギュラー古着をコーディネートするときこそ着用したくなる超・本格的アイウェアなのだ。

Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。