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STORY

妄想エスパドリーユ

ここ数年、夏になると人気のエスパドリーユ。何となく海沿いリゾートのイメージがあるのか、リネン素材の上着やドローコード付きのリラックスパンツなど開放的なアイテムと組み合わせる姿を街でも多く見かけます。スペインのバスク地方を発祥とするらしい、この麻底の靴。もとは湾岸労働者や農民が履いていた伝統的なアイテムなのでクラシックな衣服と好相性であるのは勿論ですが、最近ではHussein ChalayanやClassといったデザインコンシャスなブランドのコレクションルックでも足元を飾っています。僕が所有するエスパは二足。ひとつはアッパーにグリーンのアフリカンバティックを用いたもの。もうひとつはAnatomicaのものでクラシカルなレースアップタイプ。どちらも7~8年前に買ったものです。


レースアップタイプのエスパは足首に紐を巻き付けてみると、なんだかフェミニンな印象。バレエのトゥシューズを連想してしまいます。そういえばギリーシューズにも足首に紐を巻き付けるタイプがありますね。舞踏に何か関係があるのでしょうか?ともかく、四十路の足元をフェミニンに飾っても仕方がないので、せめて合わせる衣服は男っぽくすることにしています。

15年前に買ったFrank Lederのレザープルオーバーは豚革製です。男っぽさを演出するため、裾はショーツにイン。セシル・ビートンが撮ったゲイリー・クーパーみたいでしょ(笑)??小物はJames Lockのリネンキャスケット(黒)やCartierのTANKなど、できるだけエレガントなものをチョイス。


そういえば4~5年前のある日。このエスパに合わせたのはバルキーなケーブル編みのタートルネックセーター+ツイードのパンツ。ってオイオイ暑いだろ。いえ、逆です。寒いんです。1月だったので(笑)。真冬の素足に紐をくるくる巻き付けていたら、ちょうどその日ご来店された上司の長年の顧客、俳優のM・M氏にも「ソレ、家から履いてきたんですか??」と目を丸くされました。別に奇をてらっている訳ではないんです。ただ、思いついちゃったら実行せずにはいられない性格なんだと思います。ホントはサラッと履きたいんですけどね。妄想に取り憑かれているんでしょうね。

Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。