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STORY

履くべきか、履かざるべきか

革靴の素足履き。10年前なら某俳優の名のもとに、軽い男の代名詞とばかりに揶揄されていた行為。今や日本でもすっかり市民権を得てしまった、この行為。…ですが、本来は果たして何だったのかというと「バンカラ」の一言に尽きると思います。若い読者の皆さまからすると「バンカラって何よ?」となるのでしょうか。分かりやすくマンガで言うならば本宮ひろ志~宮下あきらの世界観。ズタズタの学帽、学ラン、下駄。バンカラの歴史は遡れば明治/大正時代にまで辿り着くようです。西洋文化を安易に取り入れるハイカラへのアンチとして、あえて粗野な身なりをすることで、外見に左右されない武士道を追及する精神。つまり「革靴なんか素足で履きゃ~イインダヨ、下駄みたいに。足が蒸れるとか臭うとかカンケーないだろ」という。トレンディ俳優とは真逆の、この骨っぽさが日本では何時からか「洒落たイタリア親父の代名詞」に誤訳されてしまった「革靴の素足履き」。無頓着を装いながらも、見えないソックスを履いたりして、実はメチャクチャ頓着してるわけです。

1970年代~のrenomaキャンペーン広告。『renoma…maurice:modographe』より。

素足履きのファッションアイコンと言えばセルジュ・ゲンズブール。彼はある意味バンカラです。逆にトム・ブラウン。彼はレースアップシューズを素足履きでユニフォーム的スーツに合わせながら「足首は男性の体のなかで最もセクシーな部分だ」と言い放つフェティッシュな男。前者は鼻毛伸びっぱなし。後者は常に綺麗にトリミングされた短髪。

日本のファッション業界でバンカラ代表は超大御所スタイリストのK・Kさんです。色褪せてチャコールグレーに見えるくらい穿き込んだ黒ギャバジンのパンツに黒スエードのデザートブーツ。洗いざらしのポロシャツ。たまに店でお会いして「お~、元気~?」なんて肩をドーンと叩かれたりすると、思わず心臓が飛び出ちゃいそうになります。セレクトショップ御三家の中ではU社はハイカラ、S社はバンカラな社風です。我がB社はどうなんでしょうか?あまり喋り過ぎると元・S社のM淵氏が出てきてしまうので、とりあえず僕は黙って靴下を履くことにします(笑)。

Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。