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STORY

勝手に泳ぎやがれ

「海が嫌いなら、山が嫌いなら、都会が嫌いなら…勝手にしやがれ!」なんて映画がありましたね。GW目前、巷はレジャーシーズンですが、僕は完全なインドア派。海も山も「嫌い」とまでは言いませんが、アウトドアライフに好んで身を投じることはありません。…ので、オフといえば専らシティ暮らし。美術館、映画館、秘宝館(ウソ)。とにかく館の中で過ごすのが通例。

ところが、数年前の夏に妻が「セブ島に行きたい」と言い出したのです。 その頃、妻は妊娠8ヵ月。出産前の休暇を異国のリゾート地でのんびり寛ぎたいと言うのです。セブのリゾートホテルを予約したものの、南国にふさわしい陽気な服を持っていない。とりあえず、泳ぐ為の水着を探しますがタンスからはジム用の Speedo しか出てこないし。今回の旅は、ホテル敷地内に海水を引き込んだ巨大ラグーンプールで、(当時3歳の)娘とのんびり泳ぐ程度。競泳用は場違い。で、ちょうど職場でセールプライスになっていた Andrea Pompilio のショーツを買ってみました。

Andrea Pompilio のプリントシャツとスイムショーツ

プリント柄のナイロン素材、内側にメッシュライナーも付いてシティとビーチの中間的なルックス。8年ほど前にニューヨークのサーフブランドが日本に上陸して以来、世の中はサーフショーツにB.Dシャツ、デッキシューズという丘サーファーブームの残骸がまだほんのり残っていた頃。Andrea Pompilio は YSL や PRADA で経験を積んだデザイナーで、テーラリングにこだわりを持ちつつも、ファンタジー度強めのアイテムが多く、巷のサーフ(風)ショーツとは一線を画して見えたのが当時の僕にとっては良かったのかもしれません。

セブ滞在中の5日間、ホテルの敷地からほとんど出ることなく、起床→朝食→ホテル内ビーチ→泳いだりビール飲んだり食事したり→昼寝→ビーチ→ディナー、という連日の堕落生活。砂浜や室内を歩くだけなので足元はエスパドリーユorアディレッタで事足りちゃう感じ。ディナーの時だけ Andrea Pompilio のショーツとシャツの上にコットンのブレザーを羽織ってローファーに足を滑り込ませます。

ディナー時はショーツにブレザーを羽織って

意外に楽しかった海辺のリゾート。帰国後もリゾートボケが抜け切らず、街中をヨタヨタと逃げ回った結果、通勤路で行き倒れて「最低だ」と呟いてみたり。普段、コンクリートの狭間で生きていると、リハビリが難儀だったりします。やっぱり都市生活万歳なのです。

娘、妻、ラグーンプール
Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。