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STORY

ルート66、夕日と共に走り去る、アイツが作ったこのベスト。

デザインの仕事を生業としているボクとしては、シンメトリーに美しく縫われた服よりも、実は人間らしく、おおらかに縫われた服の方が好きなのです。例えば良いシャツを表するポイントで、1インチに36針入っているぞ!とか、うちは3ミリを切る細巻きなんですけど・・等々、色々あるんですが、これらってある程度はミシン設備の問題なんです。歴史ある大きな専業工場になると効率アップと自分達の独自性の為にミシンをカスタムしまくります。細かーく縫える独自の装置を開発しています。そんなことを皆さんやっております。一般的な価格のテーラードJKの玉ぶちポケットや箱ポケットなんて今や人間が縫っていません。全てピスマシーンと呼ばれるロボットの様な機械が90%の部分を美しく縫い上げてしまいます。モチロンきれいに仕上がった製品に異論は無いんですが、なんとなーく、なんとなく過度に機械化された服って寂しいんですよね・・・。

冒頭、書かせていただいた、ボクの好きな人間らしく、おおらかに縫われた服って両極な2つの意味があるんです。1つはこの Amvai が始まってすぐの頃、シャツのお題の時に触れたナポリのアンナ・マトッツォの手縫いシャツ。ありとあらゆるシームがぷくぷくしていて工業製品感ゼロ!誰かが誰かの為に頑張って作った感半端ないんです。シルエットこそナポリなクセはありますが、こーゆーオーラに包まれて生きていたいと思うんです。もう1つの意味、それはプロじゃ無い人が頑張って作った服。第二次大戦の時の動員でかり出された方々が無理矢理縫ったワークシャツとか、いわゆる刑務所物なんて呼ばれている、服役中に勤労奉仕で縫われたカバーオールなんてもうピカソやバスキアのレベルなんです。計算のない蛇行、とりあえずくっついてりゃいいんだろ?的な自己基準による仕上げ等、どこをとっても愛おしい。憎めない奴なんです。

では、今回のお題、ボクのお宝のベストを見て行きましょう。

着すぎて胸元が先日裂けました。

まずこれはもともと1950年以前のムートンで出来たアウターを素人がばらして強引に作ったシロモノ。まずはベースの素材、フライトJKのB3と同時期の独特の40’Sな面持ちで、最高の風合いです。ムートンって内側の毛の生えている側が表で焦げ茶に見える服で言う表側はラッカーでペイントして作った疑似表革なんです。

だから時間と共にパリパリ割れてきます。この朽ち果てるキワの雰囲気もかっこいいんですよね〜ヴィンテージムートンって。脇にはリブを強引に縫い付けています。バイカーの方のセルフカスタムの様ですね。それと、ファスナーが最高なんです。タロンの中でもむちゃくちゃ古いタイプです。コレを叩き付けるステッチがまたひどい!2色のありあわせのミシン糸でテキトーにゴリゴリ縫っています。無秩序です。ボクも脇のリブを少しつまんでマイサイズにカスタムしました。コレを着ていると結構褒められます。人生いろいろ、美しさの基準も人それぞれってことで・・・。
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。

REVIEW