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STORY

股間を毒ガスから守るパンツのわけないじゃないですか!!のお話。


こちらは最近のお気に入りパンツ。通称M−43カーゴ、正式名称は「 Trousers Special Herringbone Twill O.D.7 」と申しまして、何とも摩訶不思議なポジションのミリタリーパンツなのです。時代感的には第二次大戦頃の物です。


特徴といたしましては、両サイドに叩き付けられたおおきなポケット。そして、多くの誤解を招いているフロントの持ち出し天狗。シルエットは股上超深めのワイドストレート。後ろ見頃にダーツは一切なく、全て脇はぎ&後ろ中心でヒップの丸みを出す強引な型紙。特に脇の食い込みはハンパ無く、レディスのパンツかよ!と思える程のヒップからウエストのカーブなのです。まぁ、ダーツを取るのがめんどくさかったんでしょう。使用目的としては主にエンジニアの方々の作業着で、関連品番でツナギやカバーオールの様なものがあります。きっと車の下にもぐったりする仰向け作業用なのでしょうから、いわゆるの位置のヒップポケットはありません。ちょっと高めのサイドポケットが唯一なのですが、これがえらく使いにくいんです。腰の一番張っている部分にあるので手を入れにくく物が出しずらい。ただ、この時期だけのあまりに変な位置のポケットなので、デザイン的にはいい感じなんですよね。マチも控えめで6ポケパンツほどボッテリしないし。

それともう1つ印象的なディテールの前開き持ち出し部分がおおきいこと。古着屋さんでは謎に「ガス・フラップ」と呼んでいて、毒ガスから身を守るという通説がまかり通っておりますが、全く意味が分かりません。このディテールにあえて名前をつけるなら「天狗を兼ねた前開き持ち出し布」です。スラックスならフツーに見られるディテールでウエストの安定感、ホールド感に貢献します。特に腹筋を使う作業着ですので、力がボタン1個にかかるより2カ所に分散する目的だったのでしょう。イタリアのスラックス業界は別パーツで天狗を付けるより、このM−43と同じ様な持ち出しの構造が主流みたいですね。ってことはインコテックスもPT-01も G.T.A も股間を毒ガスから守っているのでしょうか?写真はレディススラックス、やや小振りな持ち出しでスイマセン。


とにもかくにも、ベルトをした時のヘソ位置間で届く深い股上と程よくゴン太な裾幅が、今とってもマイブームなM−43カーゴパンツのご紹介でした。これで約80年前のパンツなのが驚きですよねー。15年位前にイタリア軍パンが大ブレイクした時みたいに、コレ流行んないかなー。

Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。