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STORY

あまりに細かすぎて、もはやどうでもいいレベルの『XXリベットの話』XXデニムトリビア part4

ボクがこの話を知ったのはデニム業界に携わってすでに20年が経っておりました。逆に言うと、どの国の古着ディーラーも日本のデニム製造関係者もボクにこの事を教えてはくれませんでした。しかしながらこの事実を知った時、目から鱗で、なるほどなーの感慨しきりなのでした。だいぶまわりくどいですね。では参ります。ホントどうでもいい話です・・・。皆さん通称66モデルのタックボタンの裏には何やら刻印が打ってありますよね。コレです。


ハイ、これこれ。有名な6の数字ですね。一説には工場の管理番号と言われております。では、ここからが本題です。アメリカに何箇所かの生産拠点を持っていたであろうL社は、わざわざその工場ごとの為に管理番号を刻印したリベットの足を生産していたのかなーと疑問に思っておりました。突然足りなくなった時、該当工場以外のナンバー物しかなかったら非効率ですよね。するとアメリカのデニム・パーツ事情通のS氏より、「そんなわけありませんよ! コマで刻印を打つんですよ」とのお言葉。それはこういう意味です。


丁度、画鋲の様なパーツを、指がさしている部分に置きレバーを下げてかしめるんですが、このコマの底に「6」という文字がせり上がっているのです。あくまで打ち込むリベットの足は全米を通じて無地だったのです。工場のコマにそれぞれ違う数字をせり上がらせ打ち込むのと同時に数字も刻も込み、この工場製だぞ! と数字でアピールしているわけなんです。工場ごとに違う数字が刻印出来るコマを支給していたのです。

どうです? これぞ、"ジ アメリカン プロダクト"だと思いませんか? ワンアクションで2つの仕事をこなしてるんです。どうでもいい話でしょう! では次に参ります。

皆さんご存知のXXは、紙パッチの後期以前は、表面に生地がはみ出るリベットを採用しております。要するにレコード盤に画鋲を刺しているような構造なので、小さな穴からデニムの繊維がはみ出してしまうわけです。後期の帽子型は突起との一体型なのでハミ毛はありません。ここでまたどうでもいい疑問が湧くのです。レコード盤に会社名を刻印してあるわけですが、レコード形状なだけに表裏って打ち込む時に分からないじゃないですか! わざわざ社名のある側を目視してコマにセットなんてアメリカ人らしくありません。

では、どうやって表裏の分からないレコード盤パーツで社名面を表に打てるのでしょうか?もうお判りですね! あくまで打ち込み前のリベットは全て無地なんです。はい、また出ました。コマの上部に社名の突起が仕込まれているんです。で、打ち込むと同時に社名が刻み込まれているわけなんです。

ほら、ここです! リベットセンターの突起から生地がハミ毛してるのがお分かりいただけると思います。


なんとか一番きれいに文字が刻まれているリベットの写真です。


これは40年代製XXです。フォントも圧力も違いますね。どうでもいいことです。


そして画鋲の裏側は、きれいに最初から社名を入れてるわけです。工場番号刻印の必要がないので・・・。最初から作っているので社名も凸で文字くっきりですね。

いかがでしたでしょうか?この事実を20年かけて知り得た自分は、鬼の首を取ったかの勢いで吹聴してまわりましたが、以外に世間の反応はクールなんです。ですのでAmvai読者の皆様だけは「マジですか?!」とおっしゃっていただけると信じ、山口百恵の引退コンサートラストシーンのようにここにマイクを、いやいや、ペンを床に置きます。
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。