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STORY

最高に気持ちのいいシャツ作り


最高に気持ちのいいシャツ作りを思い立ち、自分の過去の記憶と着道楽な友人のハイテンショントークを思い返してみた。
自分にとってのナンバー1は20歳代後半によく着ていたボロッボロのブルックスのBDシャツである。レーヨンの様な腰抜け具合で腐りかけのバナナが一番甘いが如く、最高の風合いになっていた。友人のおすすめはナポリ仕立ての手縫いシャツで、一度はまったら抜けられない魅惑の世界がそこにあるらしい。ならば、ということで3枚ほど無理言って貸してもらった。
すべてアンナ・マトッツォ工房によるものでそのうちの2着の生地はカルロ・リーバ社製とのことだ。フルオーダーの物あり既成からの寸法補正したものありだが、多分この組み合わせが現世で入手出来うるシャツの最高峰であることは間違いないだろう。
ではさっそく拝見していくとしよう。

まず触ってみる。ウーン、10数年の間に数百回洗濯したカルロ・リーバの風合いには言葉を失った。アットリーニネームのアンナ製の1着は珍しいサテン織り。組織の力も相まってシルク以上にとろっとろなタッチ、なのに通気の良さそうな甘さもある。例えが少々おかしいがスライムを触っているかのようだ。他の2着もそれぞれ通気の良さを感じるコンフォータブルなタッチ。ナポリと日本は気候と湿度が近い感覚なのかもしれない。

次にシルエット。特徴的なポイントは3つ。1つ目はネック前下がりが原型より1センチ近く高い。これは第2ボタンまで開けた時のエロさに貢献するんだろーな、きっと。2つ目として、かま底がやや高め。アンナ製シャツの特徴である袖山ギャザーのせいもあり、肩先の窮屈さは微塵も無い。闘牛士や指揮者のジャケットのAHがむちゃくちゃ小さいのは手を上げ易くする為でこれと原理は一緒。手の上げ下げでパンツからシャツ見頃がだらしなくブラウジングしてしまう事は無さそうだ。

そして3つ目はアンナの真骨頂、袖山のギャザー。これはシャツというよりブラウス感覚。ラテン的なたくましい上腕&胸板を演出する。着心地と男らしさの演出、この2つのナポリの大波に飲み込まれ、味を占めてしまった男は天使の仕立てから離れられなくなるのだろう。

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Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。