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STORY

ボブ・ディラン ノーベル文学賞受賞に寄せて。


ボブ・ディラン様
ノーベル文学賞受賞おめでとうございます。この場を借りて告白いたしますと、19年前、渋谷区恵比寿でスロウガンと言うブランドを立ち上げ、未だに飽きずに使っている弊社下げ札に印刷された文言はあなたの『Its all over now baby blue』へのオマージュです。いつのまにかうちの下げ札もノーベル文学賞って訳ですね。本当にお世話になりました。あなたの音楽に初めて出会ったのは15歳の時、すでに35年間もの間あなたに勝手に寄り添って生きて参りました。62年のデビューから現在まで未だに現役を続けておられますね。歌手生活54年です。もの凄い事だと思います。しかし世の中のファンは残酷です。あなたの54年間のうち、最初の5年間、いわゆる62年のデビュー作から66年5月26日の通称ユダ・コンサートまでの作品にしか世界中のファンは反応しません。アーティストとしてのピークが最初の5年間に来てしまった訳です。アコギとハーヴだけのあなたしかファンは望んでいない、そんな環境の中で期待を裏切り続け54年間、自分の幻影と戦ってこられました。晩年、アンコールで『風に吹かれて』を演奏しても編曲王であるあなたは筋金入りのファンですらそれが『風に吹かれて』だと判らないくらいねじ曲げてしまいますよね。常に最新の自分を見て欲しいというメッセージだとボクはそれを受け止めます。もの凄いファイティングスピリットだと思います。最後にこのノーベル文学賞がディランの特定の初期作品の歌詞にではなく、あなたの存在に対しての賞である事にホッとしました。これで66年5月26日ロイヤルアルバートホールで『裏切り者!』とファンが叫んでから50年、このあなたの半世紀に及ぶ自分の幻影との戦いも含んで賞が与えられたのですから。本当によかったです。もし文学賞受賞対象作品『風に吹かれて』などと初期限定の尾ひれが付いていたら幻影に完敗した事になる訳ですから・・・。実は未だにミスタータンブリンマンの歌詞もIts all over now baby blueの歌詞も35年聞、愛して止まない自分ですら全く意味が分かりません。なので本当はノーベル文学賞の意味は判りません。身勝手なファンと50年間戦い続けているあなたには、『お疲れ様賞』が自分にとってはしっくりくるように思えます。小林 学
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。