そろそろ張り替えの時期か、と半ば諦めかけたものの…代わりになる張り地のイメージも特には無く、何よりもこのファブリックが気に入ってるし愛着もある。そこで、フッと思い付いた。「裏返せばいいじゃん」
そう、ひっくり返せば裏面は新品同様なのだ。さっそく、座面を本体に固定するストラップの位置を逆サイドに付け替えることにした。リッパーでステッチをはずし手縫いで取り付ける。黙々と作業を続けること1時間。
ほら、新品同様。強いて言うならば、クッションを張り地に詰めるための(本来は裏側に隠れていた)ジップ口が表に見えてしまうこと。しかしそんなことよりも、ちょっとした手作業を施しただけで、このソファを向こう10年また使うことができる喜びの方が断然に勝る。ぜーんぜん気にならない。
イギリスでは、襟を付け替えて長く着る知恵がルーツと言われるクレリックシャツのことを「Poor man's shirt」とか呼ぶらしい。「貧乏でけち臭い」って意味だろうけど、チャールズパッチの例もあるし、モノを長く使うこと自体は美徳としながらも敢えて意地悪な言い方で自虐的照れ隠しに持ち込もうとしてるような気もする。ともかく、裏面とはいえ新品の張り地は気持ちいい。サステナブル云々という話をここでするつもりはないけれど、根本的には何かと言えば「手縫いで直してでも長く使いたいと思えるモノを10年前に選んでいた自分の目」にちょっと感謝するような感覚なのだ。やっぱり「好きだ」という感情こそが、何事をも継続可能なものにしてくれると思う。つまり、愛だよ、愛。














