ボクはオタクな作り手でありながら、クレイジーな消費者でもあるのでテーラードを着たとき、こんな感じで思考が動きます。
(1)自分の体に対してどこが張り付いてどこが離れているか?服と体の空間をまず感じるんです。
(2)その空間をそのブランドは強調しているのか?補正の方向なのか?をつまんだり撫でたりして自分なりに捉えようとします。狙いは強さなのかナイーヴなのか?ジェームズボンドなのか加瀬亮なのか?
(3)即ちその外郭デザインと着用者の体の隙間の処置にそのブランドが理想とする男っぷりへの仕掛けが見え隠れするんです。
毛芯、パットの類いを駆使して立ち姿の美しいシャープなフォルム&クラシックな英国調を狙っているのか?
ほぼ内容物を使わず、素材の馴染みの良さを引き出して、着用者の肉体造形を際立たせる、自らの筋肉が毛芯でありパットだと言わんばかりの昨今のイタリア・背抜き仕立てでいくか?はたまたブレードランナーよろしく、未来を予見するかの様な極端なシルエットを提案するカリカリなモード派なのか?
各ブランドのデザイナーやパタンナーにはシーズン毎に強い想いがあって、肩幅の数ミリ、袖山数ミリに理想の男っぷりと言う暗号を忍ばせているんです。テーラードこそ、その想いが最も色濃く出るアイテムだと思います。
自分のイメージする、近い将来になりたい自分と、試着して鏡に映った自分の姿が驚く程合致した瞬間、その服のデザイナーとアイコンタクトしたかの様な気になるんですよね。試着とは作り手同士だと、もの言わぬコミュニケーションとなるんです。これがボクの休憩時間のお楽しみです。だいぶ変態・・・ですよね?
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