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迷彩柄のファッションアイテム“トラッドブーム” からの迷彩。

私の古書店がスタートした2009年は “アメトラブーム” 真っ只中でした。それに当て込んだつもりは無かったのですが、開業時の目玉にしようと買い集めていた『 MEN'S CLUB 』のバックナンバーへの反応は、それはもう凄いものでした。おかげで店として順調なスタートが切れましたし、そして何より、多くのお客様と結びつくことが出来ました。昔を懐かしむ方々は勿論、研究熱心なお若い方も「アイビー」を求めていました。ファッション雑誌などでよくお見掛けするアパレル業界の方々や、著名な雑誌編集者たちの多くが、「元々はヴァンヂャケットにいたんだよ」とか「ホントは婦人画報社に入りたかったんだ」等、嬉しそうに話していらっしゃったのがとても印象的でした。
ブームは『 TAKE IVY 』の逆輸出と復刻を頂点にして次第に落ち着いていった感じでしたが、それでも『 BRUTUS 』のファッション特集や『 Free&Easy 』等、アイビーやプレッピーへのリスペクトは続いていました。時期を同じくして流行した「ストリートスナップ」は、ティーンよりもミドルエイジに注目し、“トラッド拡散” の後押しになったのではと思います。素足にローファーとか、それまでは某トレンディ俳優の名をもって揶揄されたスタイルも、この流行のお陰でかなり一般化されたんじゃないでしょうか。ボタンダウン、ニットタイ、クラッチバッグ等、そのテのアイテムが「スナップ」を通じてグッと身近になったように思います。
当然ながら、それらは自分の普段着にも影響しました。ブルックスのブレザーにセバゴのローファー、そしてヘアスタイルは横分けで、今っぽくというよりはややコスプレ寄りではありましたが。これではあんまりだなと思った夏のある日、目をつけたのがこの「 GUNG HO 」のカモ柄ショートパンツ。多分これも何かのスナップ記事で見かけて気になったんですよね。白シャツ&ローファーのトラッドスタイルに抜群のハズシアイテム。見るからに無骨なアメリカ製は、当時のキーワード「ラギッド」そのもの。2、3年前までホントにヘビロテで穿いてましたね。世間的にも2014年あたりは迷彩柄の小ブームがあったかと思います。“トラッドからのドレスダウン” という流れがあったと捉えていいんじゃないでしょうか。
そういえば今月、W・デーヴィッド・マークスさんの本『 AMETORA 』待望の日本語版が出ました。日本で独自の進化を遂げた “アメリカントラッド” について、膨大な過去の資料と多くの当事者への取材によって解説した本です。今回のテーマである “迷彩” もそうかもしれませんが、料理が難しいアイテムに興味を持ったとき、その視覚的なものやブランド名のみでなく、その根底や歴史を知ることで自身のコーディネートへの “裏づけ” にするのもアリなのではないでしょうか。オタク的ではありますが、そうして日本人は「洋服」をモノにしてきたのかもしれません。