だけれど、このブランドが海外で人気というのは本物。そう、僕のワードローブのど真ん中にあるハバーサックである。ズバリ言って僕が大好きなクラシックを少々エキセントリックに表現した着こなしは、ハバーサックからの影響である。
こちらは日本ブランドとしては、かなり早い時期からフィレンツェの「ピッティウォモ」やパリの「トラノイ」など海外の服飾展示会に出展しており、イタリア、ロンドン、N.Y.、ドイツ、韓国など世界各国の有力セレクトショップとビジネスを継続しているのだが、これってなかなかすごいことなのである。なにしろ為替などの都合で、イタリアでこちらのジャケットを買おうとすると15万円とか平気でしちゃうわけで、それってメゾンブランドと同じ土俵に立ってしまうことなのだから。
もちろん、ただ売れているだけではなくてファッション関係者からのリスペクト具合も絶大だ。僕は仕事柄ピッティ界隈のイタリアブランド関係者との付き合いが多いのだけれど、彼らとのお約束のやりとりはこんな感じ。
「お前うちの服着ないよな。ちなみにこのジャケットどこの?」
「ハバーサック」
「おう、ハバーサックか・・・なら仕方ない」
・・・というわけで彼らがつくる服を着なくても、納得してもらえるわけだ。
実際のところ、なにがそんなにすごいのかと言うと、やっぱりモノがいいということに尽きる。30’sのデザインをベースにしたテーラリングとミリタリーウェアがこちらの基本なのだが、ディテールの突き詰め方とコスプレ的にならない落とし所が絶妙。加えて縫製や仕立てのクオリティも抜群に高い。たまにインポートブランドのテーラードジャケットを着ると仕立ての悪さにがっかりすることもあるのだが、こちらは値段こそ安くとも本物。たとえば写真のリネンジャケットは7年前に買ったのだが、ビスポークにどハマりして妙に仕立てにうるさくなってしまった今でも、決して飽きることはない。
いつかデザイナーの乗秀幸次さんが、有名海外ブランドのディレクターになる日がくるに違いないと、僕は半ば確信しているのだ。
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