いつもそんな思いで新鮮な洋服を探すべくセレクトショップを覗いているのだが、もう僕も41歳。目がムダに肥えてしまったのか、感性がスレてきたのか、なかなか心にブッ刺さるモノって見つからない。このままいくと10年後にはビスポーク原理主義者か、伊丹十三や服部先生に代表されるマオカラー協会の一員になっていることは確実だろう。でもって陶芸や蕎麦打ちにハマって、若手ラーメン屋のメニューみたいな書を嗜んでたりして・・・。そういうの間違ってないかもしれないけど、僕はゴメンなのだ!
そんな、僕のちょっとした反骨心が手に取らせたのがエムズブラック( m's braque )の新作ジャケットである。
「 STOP MAKING SENSE 」ほどではないが、意味もなく肩がデカイ。生地はベーシックなネイビーだけど、オール化繊。シルエットこそ80'sだけど、ラペルのカーブやメタルボタン、チェンジポケットなどのディテールには70'sっぽい美意識が散りばめられている。ちなみに仕立ては妙にいい。・・・そう、もうワケがわからないのだ。
こんな目立つジャケットを着ていくのはさすがの僕でも恥ずかしいし、とりあえず何を合わせればよいのか皆目見当がつかない。ズボンはピッタピタでメリハリをつけるべきか? それともデヴィッド・バーンよろしくワイドパンツで「箱」みたいになるか? いや、セントジェームスのボーダーシャツにリーバイスの501を合わせて、80'sのフレンチっぽく攻めても面白いかもしれない・・・。
なんて野球選手だったらもうロートルもいいところの歳なのに、いまだにこんなことを自室でウニウニやっている自分が、ふと気づくと哀しくも可笑しく思えてくる。いつまでも、バカバカしくありたいな。
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