それは編集者やスタイリスト、セレクトショップスタッフといった「ファッション業界人しか履かない靴」。ってかそのまんまだけど。いわゆるエリートの方々に向けて雑誌をつくっている僕たちだけれど、実際のところスーツを着る必要ない、満員電車乗らない、そもそもあんまり歩かない。申し訳ないけれど、良くも悪くも現実生活におけるリアリティは皆無なのだ。
そういう僕たちの提案なわけだから、往々にして「笛ふけど踊らず」という状況は起こりうるわけで、特に靴に関してはその傾向が顕著。刺繍入りのベルベット製ルームシューズなんてその最たるもので、10年くらい前に死ぬほど雑誌に出しまくっていたものの、借りてた靴屋さんに「あんた方がよく履いてるもんだから買い付けてみたけど、全く売れないっすね」と吐き捨てられたもんね! 言い訳させてくれ。ラルフ・ローレンがよくヴィンテージジーンズに合わせていて、格好よかったんだよ!
今回紹介したいのは、僕が「ルームシューズの次に来る」と目をつけて、5〜6年くらい前にガンガン露出していた「ベルジャンシューズ」だ。こいつも海外のお金持ちがスリッパがわりに履いている靴。本当は「ベルジャンシューズ」とは、これをつくっているベルギーのブランド( belgianshoes.com )の名前であり、こちらの靴(右)のことを指す固有名詞みたいなのだが、日本では売っていなかったので、似たようなものをよく借りてきて掲載したものだ。好きが高じて、MEN'S Preciousで英国ブランド「ガジアーノ&ガーリング」に別注モデルの製作(左)を依頼したりもした。しかし今だから正直に言おう。どれも反響という意味ではイマイチであったと・・・。このやわらかなディアスキンといい、ウィメンズ靴みたいなフォルムといい、最高なんだけどなあ。
そんなわけで結局「業界人シューズ」どまりだったベルジャンシューズなのだが、僕はいまだにしょっちゅうリーバイスに合わせて履いている。女性がヴィンテージジーンズにマノロ ブラニクのヒールを合わせるような・・・そういう効果があるような気がするのだ。あるとき某ブランドショップのスタッフさんが「ガジアーノ」の別注ベルジャンを履いていた時は、思わず「ありがとう!」と声をかけてしまったぞ!
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