「タンバール 90mm f/2.2」というちょっとミステリアスな響きの名前を持つそのレンズは、純正ライカ唯一のソフトフォーカスレンズである。1935年に登場し、3千本程度しか生産されなかったという極めてレアなもので、その異名は〝レンズ界の7不思議〟。僕のようなシロウトが、しかも3本目のレンズとして手に入れるなんて、正直言ってヒンシュクものなのである。
その写りの特徴は、紗のかかったまるで絵画のようなボケ具合。クリックしてご覧いただきたい。この芯は感じさせながらも柔らかくしっとりとした描写を。このレンズを通せば、歌舞伎町の風俗街だろうがパチンコ屋だろうが上品なムードの写真になってしまうのだ。タンバールマジック!
しかし正直言ってこのレンズ、あまり出番は多くない。仕事ではまず使えないし、ヒゲを生やしたオッサンを撮るとなんだか気持ち悪い写真が完成する。一度は木村伊兵衛のように美女のポートレートに使ってみたいものだが、長年、男塾ワールドで仕事をしているため、残念ながらそんな機会はいっこうに訪れやしない。そう、私がこのレンズの性能を生かせるとしたら、もはや花を撮るしかないのだ・・・! 街灯と月明かりに照らされた靖国神社の桜をこのレンズで撮ったら、さぞかし妖しげで幻想的な写真ができあがるだろう。酔っ払いにビールを引っ掛けられたら、もはや泣くしかない。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。