自分もかつて上京したての頃、田舎の両親とのやりとりに手紙をしたためていました。サラサラッと達筆に書ければどんなにいい事かと思いますが、字はヘタクソで、漢字も辞書を引き引きやっていたので、現在のEメールと比べるとそれは手間のかかる行為でした。でも、そうやって書いた “手書きの便り” というものはやっぱり特別感があるもので、実家の箪笥にはそれらの封筒が大切に保管してあったように記憶しています。自分も親の立場になってみれば尚更ですが、それらは易々と廃棄できるものであるはずがなく、それどころか宝物にすらなり得ると思っています。
今の自分にとって、紙の手紙の良さを無理なく、そして押し付けがましくなく発揮できる形態が一筆箋です。贈り物にはもちろんですが、仕事上の事務書類などにもそっと添える一葉が、そのコミュニケーションにおいて間違いなく含蓄を与えるものになるかと思います。私の店が位置する神保町のすずらん通り近辺には老舗の文房具店や和紙の店が複数あり、この狭いエリアのなかで数々の個性的な商品を選り抜く事ができます。日本的な季節を感じさせるものから、シンプルな罫線のみで構成されたもの等、いずれもポストカード未満の演出で繊細なニュアンスを助けてくれます。また、実際には使用できない表紙部分もそれぞれが美しく、“ジャケ買い” 的な魅力も充分なのです。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。