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究極の財布A面 おしゃれすぎるボクだから。 B面 シュールで堅実なぼくだから。

Side A   オシャレすぎるボクの財布選びにミスはない。オシャレ情報に即反応するボクはサントノレに出来た GOYARD 直営店を見逃さず、ステンシルの個人オーダーサービススタートに対して日本上陸前からキャッチ&即実行してしまうのだ。さて、パリ到着、GOYARD 直営店スタッフとベースとなる財布をチョイス&ステンシルを直ちに依頼。ネイビーベースの財布に2色をコーディネイトするのだ。オシャレなボクは迷わずタワレコカラーのイエロー×レッド指定。なんと言うバッドテイスト! これぞパーソナルオーダーの醍醐味、既成ではつい逃げたくなるヤバい一撃を加えてこそのオシャレ巧者なのである。しかし、何か足りない。イニシャル以外に何かないものか??店内を見渡すとヴィンテージの中に写真の王冠柄があった。オシャレハンターは果敢に反応、「ムッシュー、あのクラウンをここに!」なんというわがままなオシャレさんであろう。「可能か聞いてみます・・」とスタッフ君。あまりのおしゃれすぎる己の立ち振る舞いにクラクラしながら財布の本体代金約¥48000を支払った。「いつ完成する?」と軽く聞くと「クリスマスのプチカドかな?」などとイニシャル入れに半年よこせというマルセイユ時間で生きている彼にボクはオシャレにも「気長に待ってるよ!」と一言残して店を出た。そして物忘れの激しいオシャレなボク宛に12月の中頃、小包が付いた。「小林学さんですね?、はい、税金、送料他で5万円です・・・」と郵政省。あまりのオシャレじゃない金額に「ちょっと待て、財布代は現地で支払い済みだし、何かの間違えだろ!」とオシャレとは言いがたい強めの口調のボク。「あー、インヴォイスありますよ・・はい。」と郵政省。なになに、ステンシル・スペシャルで3万円??そして送料、TAXで5万円!あまりの自分のオシャレ発注に怒りさえ覚えたが後の祭り。¥48000の財布を¥100000の価値までに高めてしまう自分のオシャレっぷりに苛立ちながらも郵政省から小包を渋々受け取った。値段を見ないでのピスボーグ in 海外の怖さを思い知るのであった。オシャレすぎる人生の代償は常に高く付くのだ。


Side B   シュールで堅実なぼくはブランド財布など持つはずが無い。ただでさえ犯罪だらけの街のフリーマーケットで価格交渉をする様な人間が現金を入れる器に見栄を張って何の意味があるのか?? なので長きにわたり、海外遠征時の決定的便利財布を決めかねていた。しかしある時、パリのオシャレホテルでのチェックイン時にその後トラウマとなる光景を目撃したのだ。どう見てもファッション界に永く浸かっておられるような独特のオーラを放つ GQ のモデルの様な初老の外国人がポケットから出した財布は「ジップロック」であった。確信犯的彼の前に完敗であった。チクショウその手があった。斯くしてその後の海外渡航のお供は口の堅い透き通った心のこいつと寄り添うこととなるのである。ジップロックって家庭では料理の冷凍保存や食品分類なんかのイメージが強いが実はジュエリー業界の在庫保管はすべてジップロックである。カルチェの5000万のパンテールのリングだろうが、ティファニーのあずき大のダイヤモンドだろうが、白手袋をしたセールスがビロードのお盆に乗っけて持ってくるウン千万のお品物は全てジップロックに入っている。そこでシュールで堅実なぼくは夢見るのだ。オシャレホテルのフロントでぼくがジップロック財布を出してもコンセルジュから『ああ、このムッシュは自分のセキュリテに敏感なのであろう、きっと。』と思われる様なオーラを醸したいものだと・・・。ただジップロックはウカツに扱うとチョー安っぽい。ただただビンボー臭い分類マニアの主婦にもなり得ることを心しておきたい。