しかし現実的にいうと、その野望を叶えるのは厳しいといわざるをえません。まずなんつっても値段がべらぼうに高い。4500〜5000ポンドはかかりますから、為替によっては100万円コースです。しかも初回は3回ほど仮縫いに訪れる必要がありますから、多くとも半年に1回しか渡英できない身ではね・・・。ちなみにお店に足を踏み入れた瞬間に漂わせる「コイツ何しにきやがった」的高飛車ムードにも、心折られること請け合いです。
そんなわけでスーツは半ば諦めているのですが、A&S の近くには、そのムードを気軽に堪能できるレディメイドのショップ「A&S ハバダッシャリー」が近隣にあるので、渡英の際は絶対にチェックしています。何を隠そうこのお店こそが、2016年現在私の考える「世界で一番趣味のいいショップ」。いわゆるジャケットやスーツなどのクロージングは扱っておらず(ビスポークしろってこと)、A&S のスーツを着ている人のための、上質な休日アイテムを取り揃えているお店です。
こちらはテーラーとはガラリと変わって接客がとてもフレンドリーという、ツンデレ的スタイルにくわえ、女性のバイヤーが手がけているだけあって、ニットやチーフ、ストールなどの色使いが最高。マノロ・ブラニク別注のカラフルなピッグスエードシューズなんて絶品なのですが、私がここで一番好きなのはパンツ。なんたって A&S のカッターが型紙を引いていますから、シルエットが抜群なんです!
12型の定番モデルと、様々な生地を組み合わせて展開しているこのパンツコレクションの中でも、私が買うのは決まってグルカタイプのパンツ。太くもなく、細くもない中庸なシルエットなのですが、なぜだか野暮ったくはない。ちなみにフィッティング後はすぐテーラーに持って行ってくれ、次の日には裾上げが完了するところもさすが。そんなところに、名門テーラーのこだわりをビシビシと感じます。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。