もうひとつ気になるのが手元、つまり時計のチョイス。アンティークウォッチはさすがに不安なので、ある程度濡れてもよいものを選びたい。けど、いわゆるダイバーズやミリタリー系ウォッチの類いは一切持っていない。クロノグラフやメタルバンドが見た目的にどうしても苦手だったり、自分の軟弱スタイルには男っぽ過ぎて合わなかったりするので Timex の Camper でギリギリな感じ。18歳の頃には agnes b. のクロノを着けていたけど、大人になってからは全く買わなくなった。そもそも防水・耐水モノは衣類でもほぼ持っていないし、シェル系素材は41年間一度も着たことがない。たぶん時計や衣服に機能性をほとんど求めていないんだと思う。時計に至っては時間を正確に刻んでいなくてもかまわない、というくらいアクセサリー感覚だったりする。手巻きのものもよく巻き忘れるし、もはや止まっていてもいいのかも。アンディ・ウォーホルの時計は止まっていたなんて説があるけど、彼にとって時計は時刻を確かめるためのモノではなかったらしい。 Cartier TANK を愛用していた彼は「I wear a Tank because it’s the watch to wear」と言い放ち、ゼンマイすら巻いていなかったというのは有名な話。真贋のほどは定かではないが、個人的には共感できるエピソードだ。
ということで、梅雨時期に僕の手元を飾るのはラバーバンドの Swatch だ。生活防水レベルなので濡れても大丈夫には限界があるんだろうけど、濡れて壊れてもそれほど惜しくないチープさ、という意味で「大丈夫」なのだ。何よりアクセサリー感覚。ブレスレットを付け替えるくらいのつもりで、その日の洋服に合わせている。例えば写真右側、リンゼイ・ケンプのマリン風イラストが入ったものなんかは曇天をちょっと明るい気分に変えてくれたりして。でも、結局自分で文字盤を見ることがほとんどない。僕にとって時計とは見るものでなく、見られるものなのだろうか?
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