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真冬の名作ニットオーストリア最大の謎ニット『HOFER』

ボクが初めてパリを訪れたのが1988年の夏だった。あまりのカルチャーショックからか、あたふたしている間に気が付けば秋だった。80年代末、当時のパリの流行りって何だっけなーと思い起こして見ると、雑誌オリーブなんかでもほんのり紹介されていたチロリアンスタイル??、そんな感じのリセの女の子がやたらと目についた記憶がある。それと何と言ってもマドンナの影響からかショート丈のダブルのライダース。だらけといっても言い過ぎで無いくらい街は黒革で溢れていた。これにペダルプッシャーなジーンズでね。ピッタピタなやつ。
はい、チロルに話を戻しますが、目についたと言っても襟回りのパイピング風デザインや平べったいコインを模した釦を特徴としたニットJKを数多く見ただけなので、それらがタイトルのHOFER社のニットJKかどうかは今となっては解りません。ただレトロこの上ない雰囲気とサウンドオブミュージック感全開なこのJKをパリの人々越しに眺めると何ともイイんですよねー!無造作にアップにしたマロン色の髪、鳶色の目、そしてオーストリアだからなのかファッション感覚の色出しからちょっとずつ外れた微妙なカラーリング。コレが揃ったらもう無敵ですね。さらにリセエンヌ的にはボロボロの501(ブリーチ色)とあわせるのが当時はマストでしたっけ。決して上質とは言えない様なマフラーを首元グルグル巻きでねー。
なんとあれから30年の月日が流れ、ボクの手元に1着のオーストリア製HOFERニットJKが送られてまいりました。送り主はお取り引き先のバイヤーの方からで、日本でこの作り方は可能かどうかの調査依頼であった。企画会議で懐かしい当時話で盛り上がったんでしょう。そしてボクはそれを手に取ってみて唖然とした。とてつもなく分厚い! 厚手の毛布とでも申しましょうか? こんなだったっけなーと思いつつ、当時を知ると思われる、糸商、編み立て工場、縮絨工場の3軒を回って結果を伺った。結論はこのようなものだった。 まず、ここまで縮ませるには当然ウール100%でなければならない。編み地はガーター編み、ガーゼの様なゆるゆるの目付で巨大なJKを作る。裁断は一切せず、最後はリンキングで縫い上げる。この段階でXXXLサイズのJKな見た目。これを古くから伝わる謎の技を使ってあの毛布で出来たような風合いまで強制的に縮めるのだ。そのまま縮めようとすると袖や前後見頃がマジックテープの様にくっついて一緒に毛布になってしまうそうだ。特殊な型でもあったのか? 大昔に出来て今出来ない人類の謎『HOFER』製法! かつて勇敢にもトライした日本の技術者曰く、B品率85%、百貨店基準なら全滅だったそうだ。英国王室も御用達な、ダイアナ妃もご愛用だったこのHOFER。もうブランドは消滅してるので叶わぬ夢だが、どうやって希望サイズに仕上げるのか機械設備を見てみたかったなー。
人間が着たまま風呂に入ってたりして・・・笑。