冬の名作ニット、というお題目ではあるのだがFANNI LEMMERMAYERのカーディガンは「一年中活躍する」名作ニットだ。表裏が無いパール編みのタッチやアンデスの厳しい環境を生き抜くために「中空(ちゅうくう)」になっているアルパカ毛の構造が、秋冬は保温性、春夏は通気性を高いレベルでKEEPする天然のハイテク素材なのだ。ストライプ柄のものは色数や柄の面積が増えるほど高価になってしまうが、その肌触りや発色の良さを一度体験すると、もはや病みつきになってしまう心地よさ。セレクトショップスタッフ御用達のようなイメージが昔からあるアイテムだが、それもひとえにHEMISPHERESスタイル的な記憶が日本の洋服好き達の中に遺伝子として組み込まれているためだろうか?先輩の話によると、1990年代前半のVOGUEか何かでデザイナーのクリスチャン・ラクロワがLACOSTEの長袖ポロにFANNI LEMMERMAYERのストライプカーディガンを羽織っている姿が掲載されたこともあり、当時はモード好きのスタッフも巻き込みながら皆こぞって真似をしたそうだ。確かに会社の古い先輩はみんな着ているような気もするし、3年前に原宿のビームスボーイでオーダー会を開催したときなどは、ビームスで何十年とお買い物をされている40~50代以上の男性のお客様も数名、カーディガンやベストを注文しにご来店された。僕もお客様のアテンドをしながら、配色やストライプの幅について一緒になって「楽しく」悩んだものだ。昔あったベルスリーブみたいなクラシックな形は現行品では無くなってしまっており、なんなら裾や袖口にリブのないモダンな仕様のものも巷では見かけるようになったが、やはりシルエット的にもカラーリング的にもリブがキモである。10年ほど前に購入した僕のカーディガンは12色ファンシーカラーのマルチストライプだが、リブがライトグレーなので意外に合わせやすい。当時はフェルメリスト ビームスでオーダー会を開催しており、調子に乗った僕はストライプの幅やリブの配色を細かく指定して注文したところ、「そんなメンドクサイことはできない」と本国から見事お断りをいただいた。古着屋を探せばFANNI LEMMERMAYERネームのものから米ストア系ブランドの別注品、ロング丈の珍品(これは10年近く前にCLASSの堀切氏が再現済)まで、色々と見つかるだろう。色数の豊富さゆえに、自分好みの一着を見つける楽しさもあったりするので、見た目の派手さに躊躇せず、まだの方は是非チャレンジしてみてほしい。歴史は長く、作りはハイクオリティで配色はエキセントリックという、異色のベーシックアイテムだ。
REVIEW

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「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
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