仕事柄、ほぼ毎日なにかしらの上着を着ている僕は、春らしい陽気が続くとジャケットのインナーに軽さを求めてしまいます。2~3年前はニットポロでしたが、今年はトレンドのど真ん中、ラガーシャツに挑戦。ラガーシャツ自体は僕が13、4歳だった時分にも流行したアイテム。僕はポロシャツ派(初めて Ralph Lauren のポロシャツを買ったのもこの頃)だったので手を出しませんでしたが、近所に住むM君は着ていましたね、ラガーシャツ。グリーン×白の横縞模様、左胸にはなぜかコカ・コーラのロゴが刺繍されていて(笑)。ま、30年近く前のド田舎の中学生ですから…。ともかく、青春時代はスルーしていたアイテムに齡40にして初挑戦、というわけです。当時はバーバリアンなどの王道ブランドを普通にチノパンに合わせるような着こなしだったと記憶していますが、その頃ラガーシャツの何が嫌だったっかと言うと…「ザ・体育会系」というあのマッチョ感。痩せていた僕は絶対似合わないと思っていました。ラガーシャツのアイコンと言えば山下真司しか思い浮かばない、という年代。ビンタしながら泣くという、あの熱血な世界観が僕には重た過ぎました。しかし、よくよく考えてみたら、いるじゃないですか。山下真司以上のラガーシャツ HERO が。デヴィッド・ホックニー大先生。どんなスポーツアイテムを身につけても、実に英国人的なツイスト感をキープできる、異次元レベルの「こなし力」。センスのカタマリみたいな佇まい。とはいえ、凡人はスニーカーの靴ヒモをはずしたりとかエキセントリック方面に真似してもムダなので、あくまでも参考にするのは色使いとかオタクムードだけ。ということで、僕の場合はスーツにイン、ブレザーにイン。上着はアメリカンな IVY コンストラクションではない方が望ましい。英国調の構築的なショルダーラインにラガーシャツ。Used のラガーシャツは90年代ラルフローレンのもので、白襟じゃないところが気に入ってます。オレンジに白、ロイヤルブルーという鮮やかな配色は、大雨の中で泥水をすすりながらスクラムを組んでいるマッチョイズムの正反対。山下真司が泣くどころか、ニヤニヤしながらビンタしてくるような血の冷たさ。そんなイメージ(?)を元にアートマインド(ポロック的ペイントのスニーカー)やヘナチョコパンクスピリッツ(キャップに付けた缶バッジ)を加えればナードな文系ラガースタイルの出来上がり。中学時代にガムを噛みながらテニスの練習(テニス部のキャプテンでした)をしていたら顧問にビンタされた頬の痛みを胸に、トレンドセッター、アレッサンドロ・ミケーレの左斜め下を這うように進む僕の歪んだ HERO 像。幸いなことに、アメリカ西海岸経由のイギリス人アーティストが何十年も前にそのすべてを体現していました。
REVIEW
手元で馴染んだオーダー品
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
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買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
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90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
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80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。
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