そんな天才達の残した作品群の中で、何か写真集で一冊というなら、間違いなくボクは『チロ愛死』。
これは天才アラーキーが22年もの間、寝食を共にした愛猫チロの死期を悟ってからのドキュメント。そして、表現手法に於いて、「本」である事に極めて深い意味を持たせている。
ページをめくる。
チロの元気な頃から荼毘に付すまで、ゆっくりと時が流れている。そして合間合間に配される、ベランダの定位置から撮られたいつもの夕焼け、電線。ベランダ、電線の繰り返し。そして少々のエロ。デジタル画面でカーソルのスクロールではこの悲しみの正体は決して見えてこないだろう。写真集だからこそ、ページをめくる指先から、ビシッ、ビシっとムチで叩かれる様な激痛が心の奥まで響いてくる。その痛みの音とは裏腹に、この作品は全編を通して不思議な静けさに包まれているのだ。見ている間、写真からは全く音を感じない。周囲の音すら何も聞こえてこなくなる。まさに無音の世界。何故だろう?? ボクには解らない。
ただ刻々と死に向かうチロ、その日の夕焼け、電線、ベランダからの風景・・・この無機質&ループなページ割りを繰り返し眼で追っていると、『来るべきその日への覚悟』『焦燥』『運命に逆らえないという現実・・・』こんなワード達が、夕焼けやベランダ写真の後ろ側にじわっと映り込んでいるのが、いつしか見えてくるのだ・・・。
この1冊が天才・荒木経惟の眼が産み落とした悲しみのカタチ。チロが逝って、アラーキーが新たに産み落とした、悲しみのカタチをした本なのだ。
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