念のため解説しますと、現代のノーマン・ロックウェルとでもいうべき温もりあふれる本気(マジ)タッチから、ファッション業界人のイタいところを突きまくるコミカルタッチまで、幅広い画風を駆使して長年活躍を続ける、超人気イラストレーターです。そしてこれまた有名な話だと思いますが、画伯は業界屈指のベストドレッサー。まるでラルフ ローレンの世界から飛び出してきたような着こなしでいつも私たちを楽しませてくれる、とってもチャーミングな方なのです。
今回は、そんな画伯から教えていただいた逸品スリッポンをご紹介。
打ち合わせのときに、ロールアップしたデニムとカラフルなソックスに合わせておられたこの靴が実に英国貴族的で格好よかったもので尋ねてみると、なんとこれ、「ハルタ」製なのだとか。そう、高校の通学用ローファーで有名な、あの「ハルタ」ですよ・・・!? となると、もちろんお値段もスチューデントプライスの8640円! こ、こんな格好いい靴が1万円以下・・・? 生まれてはじめてシューズのネットショッピングを試みたところ、実は若者たちの間でたいそう流行っているらしく、すでに超品薄。かなりサイズの欠品がありましたが、なんとか購入ができました。
実際に届いたブツを確認したところ、つくりや革質は値段相応といったところでしょうか。しかしこんなに格好いいんだもの、本革ってだけでOKでしょう! 昭和なパッケージも泣かせますね。それにしても、今までチャーチなどのブランドでこういった靴は見たことがありますが、いったいこの〝ヒールのついたスリッパ〟を思わせるデザインには、どんな意味があるのだろう・・・。インソールのプリントには『スポックシューズ』と書かれていますが、spock を辞書で調べてみると、「英国に実在した小児科医の名前」と出てきます。むむむ・・・これ、どういうこと?
しかし持つべきは博識な Facebook の友達たち。こいつを自慢も兼ねてアップしたところ、ファッション業界の大御所さんたちから、たちどころに様々な情報が寄せられました。このタイプの靴は、英国では「ドクターシューズ」と呼ばれており、医師や法律関係者をはじめ博士号をもつ階級の人々が、仕事の際に履いていたものだということ。着こなしはネイビーのチョークストライプスーツ(+オフホワイトの6Bダブルブレストのスーツ)がお約束だったということ。そしておそらく英国の「ドクターシューズ」を手本につくられたと思われるこの『スポックシューズ』は、日本では牧師さんやお坊さんが愛用していたということ・・・。皆さん、ありがとう! そんな、いわゆる特殊な職業の方々のためにつくられたシューズが、2016年の東京で最先端ファッションアイテムとして人気を集めているなんて、面白いものですね。
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