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心を灯す照明伝説の代官山『木屋ギャラリー』からボクの元に届いたアールデコ期のフロアランプ。

以前、代官山の築60年のマンションに事務所を構えていた。高度経済成長からバブルまで、日本社会と波瀾万丈を共にしたコンクリートの塊の様な建物だ。
場所柄、いわゆるカタカナ職業の所有者が歴代多かったようで、なかなか個性的なリノベーションがそれぞれの部屋になされている。ニューヨークのロフト調、パリのステゥディオ調、北欧のアパート調などなど。本当にここが東京なのかと錯覚する程の完成度に、経年変化が加わりそのイメージを増幅しているのだ。我がスロウガン事務所も完璧なパリ仕様の部屋であった。歴代居住者が分厚く塗り重ねたペンキの壁、70年代のローズウッドの化粧合板、Tバーの鉄枠窓、そこに自分でジュート麻のタピ(絨毯)を全面に貼りめぐらした。隣室との壁も厚く、なんだか流れる時間が独特な、自分の耳を両手で塞いだ時に聞こえる不思議な音がづっと続く様な、とても集中出来る空間だった・・・。
写真の1930年代製フロアランプはこの同じマンションの向かいの部屋に住んでいた方から譲り受けた。氏は80〜90年代の雑誌『オリーブ』に度々登場し、パリのティーンエイジカルチャーを誌面で紹介されていた。直接お会いしたのは初めてだったが、学生時代から氏の記事は愛読させて頂いていたので初対面な気がしなかった。氏の部屋もまた完璧なパリの部屋であった。
ここでスロウガンは4年間仕事をした。そして5年目の年、直営店構想が沸き起こり引っ越しを決意した。しかし、運命とは皮肉な物で同じタイミングで氏が旅立った。パリより遥かに遠いところへ・・・。
フランス30年代製、独特のクロムメッキの光沢。アールデコモチーフを持つこの逸品は氏の奥様がボクにくれた。以前部屋にお邪魔した際「カッコイイ!」と言った時の事を憶えていて下さったのだ。手渡しされる際、近所の木屋ギャラリーで氏が一目惚れで買った時の事を懐かしそうに話してくれた。ボクはそのエピソードを取り扱い説明書として大切に受け取った。
そして11年が経った今月末、スロウガンは代官山直営店 WHITE の1階に小さなヴィンテージ・カスタムウェアのお店をスタートさせます。詳細は追ってご報告させていただきます。
このフロアランプはこのお店で使わせていただきます。同潤会アパートがあった頃の代官山の歴史の様なこのランプ・・・。
きっといい店になると思います・・・。