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プリンシプルを貫くスーツスーツはスーツでも「サイレンスーツ」

スーツは仕事柄たくさん持っているが、その中でも変わりダネといえるのが、2012年につくった「サイレンスーツ」、いわゆるオールインワン、要するにつなぎである。しかも驚くなかれ、ビスポークじゃい!
そのちょっと前からつなぎにハマってアダム・キメルやトラサルディやら色々買ってみたのだが、ああいったものは外国人体型に合わせた総丈に設定されているため、身長168cmの僕が着ると胴が長すぎて妙なバランスに陥ってしまうのだった。あと、ウエストにベルトがないと全体の重量がモロに肩にかかってくるので、非常に肩が凝る。なかなかしっくりくるものが見つからなかったのだ。うーん・・・ならばビスポークでつくるしかない!でもわざわざ仕立てるのだったら、単なるワークやミリタリー風味のそれじゃつまらない。紳士御用達雑誌『 MEN’S Precious 』のファッションディレクターらしいつなぎ・・・そうだ、チャーチルの「サイレンスーツ」だ!
かの英国元首相ウィンストン・チャーチルが、ボイラー技士の制服をもとに「ターンブル&アッサー」にオーダーし、第二次世界大戦中から晩年まで愛用していたつなぎこそ、「サイレンスーツ」。防空壕にこもったり庭仕事をするときに着るためのもので、その名は空襲のサイレンにちなんでつけられたという。チャーチルの資料にあたると、ウール素材はもちろん赤や緑のベルベットまで、彼が実に様々なタイプの「サイレンスーツ」を着ていることが見て取れる。もちろん僕がパクったのはウール素材。知る人ぞ知る腕ききの仕立て屋「平林洋服店」に相談し、マーティンソンのチョークストライプフランネルでつくってもらったのがこちらである。生地、デザイン、ディテールともに完璧だが(一番好きなのはターンナップカフ)、身体にフィットしたつなぎの快適さは、そでを通した人にしかわっかんねえだろうな。

オーダーして以来、ときにはタイドアップ&ジェームス・ロックのハットを合わせてチャーチル風に、ときにはニットにベレー帽を合わせてフレンチワークマン風に、と大活躍してきた僕のサイレンスーツ。最近は映画『キングスマン』に登場したり、「ラルフ ローレン パープル レーベル」から発売されたり、 pitti uomo に似たような格好の韓国人があらわれたり・・・微妙に流行ってるみたいだが(といってもアンダーグラウンドの底の底の世界における微風みたいなものだけど)、この分野においては間違いなく僕がダントツに早かったことだけは覚えておいていただきたい!