そう、この業界はそもそも見た目で判断されるものなのだが、モードの世界はそれが顕著。とくに女性PRともなると、こっちがいくら総手縫いのビスポークスーツを着ていようが知ったこっちゃない。単なるスーツを着たジャパニーズ坊主なのである。しかも僕は以前、神保町の人気ラーメン屋「覆麺」のオヤジに「あんた僕のこと知ってるでしょ。お客さんラーメン好きそうな顔してっからね〜」と感心されたほどの粗野フェイス。残念ながら、帽子をかぶっていなければファッション業界人とは見なされないのである!
というわけで自宅には50を超える帽子コレクションをそろえているのだが、なかでもとっておきが、こちら。トップにラムスエード、裏側にカシミアを使った、世にも珍しい「エルメス」のキャップである。こいつに「ソラクザーデ」で買ったヴィンテージの丸メガネをかければ、誰がどう見ても脱・ラーメン屋。洗練されているかどうかは別として、得体の知れない〝業界人的〟に見えることは間違いないだろう。あとはレストランだろうが取材だろうが脱がないという、鉄のメンタルさえあれば完璧だ。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。