ということで、秋冬の帽子。例えばベースボールキャップをかぶるにしても、普通のコットンツイルだと物足りない。というか野球部。で、もう少し質感や季節感が欲しい。個人的にここ数年でいくつも購入しているのがオーストリアの Muhlbauer (ミュールバウアー)のもの。10年前はビームスでもメンズを取り扱っていましたが、いまはウィメンズのみの展開。仕方なく本国のオンラインストアから通販しています。昨年買ったローデンクロスのキャップも気に入っていますが、今シーズン入手したのは太畝コーデュロイ素材で耳当て付きのもの。被り口が浅くバランスが取りやすく、グレーという色目もアーバン感高め。ちなみにここの帽子、製品に手書きのサインが入ったタグが付いていて、つまり「私が作りました」という印なんですね。農家の人達が両手にトマトを持って最高の笑顔で写っている写真を妄想してしまうような、そんな素朴さも Muhlbauer の魅力。
ここの帽子をよ~く見てみるとツバのカットが左右ビミョーに非対称だったり、ステッチが所々曲がっていたりと随所に見られる手作り感。日本メイドの緻密さとはまた違う、愛嬌や哀愁(?)を感じることができます。よく言えば「味わい」、虫食いの跡がある無農薬野菜のようなイメージでしょうか。
この Muhlbauer という帽子屋の歴史は非常に古く、なんと1903年創業!10年近く前にウィーンを旅行した際に市内中心部にあるショップに立ち寄ってみたことがあります。老舗のクラフト感とファンタジックなファッション性に溢れた非常に面白いお店でした。パリやミラノのモード観とは一味違った「下手ウマ」的ローカリズムはグロバリゼーションにさらわれてしまいそうな今のファッションに良い意味で違和感を持ち込んでくれそうです。帽子と一緒に届いたポストカードから伝わってくる、このとぼけたナンセンスムード。ヨーロッパやニューヨークのように耳がちぎれ飛ぶような寒さがやってくるわけでもない東京の冬に、この耳当て付きの間抜けなキャップを被る僕のナンセンスな脳ミソ。やっぱり、実用性よりも気分で服を選んでしまうんです。
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