かくして30年後。いまだにアムロ・レイに共感するこじらせ中年になってしまった僕だが、「このわた」が食べられるようになった頃と時を同じくして、ようやくあの頃の中年たちが放っていた、喉越しの悪い格好よさを理解できるようになった。
そこでクローゼットの奥から引っ張りだしてきたのは、2011年に買ったグッチのスエードジャケット。素材は超肉厚なカーフスエード。ビッグラペルで超タイト、着丈は長く裏地には総柄のシルクを使った、70年代中年たちのマンダム臭がプンプン漂う逸品である。そうとう高価なものだったが、今までは合わせるものが見つからず、数回しか着たことがなかったのである。着たとしてもデニムやカーゴパンツで無難にまとめていた。しかし今の僕は知っている。コイツには襟のデカイニットシャツ、ジェントリーフレアのスラックス、ヒールやや高めのビットモカシン、素通しのティアドロップ、というコーディネートが最高に格好いいということが・・・。残念ながら酒もタバコもダメで、しかも坊主な僕だが、このコーディネートで飯倉の「キャンティ」に行き、業界人ヅラをしてバジリコスパゲティでも味わいたい。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。