「木を隠すなら森の中」なんて言葉がある。カモフラージュ柄のアイテムって、森や砂漠や雪原に潜むためのものなので、グレー色の都会で着るには少々目立ち過ぎてしまう。しかも、僕が持っているArk Airのアイテムはクレイジーパターンのカモ柄、1着の中で迷彩柄の博覧会を絶賛開催中。目立って仕方がない。とりあえず、Air Airのカモフラージュパンツをカモフラージュさせるために着こなしだけはトップスと色の調子を合わせてみる。
リネンのジャケットをはじめ、ダックカモのスモーキーなトーンに合わせた実例。サンダルもグルカを選んでみた。
グリーン×ブラウンのデジタルカモに合わせてジャケットやブーツでブラウンをチョイス。上着のメタルボタンもちょっとしたミリタリー?
うっかり朝寝坊したときなどはカモフラージュをカモフラージュするためにカモフラージュのジャケットをとっさに羽織ってきてしまった実例。クレイジーパターンを隠すには、さらに柄を増やしてみるという逆転負けの発想。ちなみにこの「クレイジーパターン」の手法は日本でも昔からセレクトショップを中心によく見かけたものだ。袖、襟、身頃、左右で配色やピッチが違うキャンディストライプのB.Dや、ヘリンボーン、チェック、ストライプを組み合わせたツイードジャケットなど。SHIPSやBEAMSをはじめ、The Stylist JapanやHis Tube、ネペンテスなどアメリカの影響を強く受けたショップやブランドのイメージが強い。このスタイルの起源に、米国のマサチューセッツ州ケープ・コッドの南に位置するナンタケット島がある。普段は都会でエリートな顔をしている高級プレップな人々が別荘のあるこの島をバカンスで訪れ、夜な夜なパーティーを開く際に普段はあり得ないくらいのド派手な出で立ちで集まるというのだ。圧倒的なエスタブリッシュメントだけに許される社交界の「お遊び」といったところ。このド派手な衣装全般を隠語で「Go to hell(地獄に落ちろ)」と呼ぶらしい。で、この「Go to hell」の代表的なブランドが当店でも10年以上前に取り扱っていたWinston TailorとLily Pulitzer。それぞれがJ.F ケネディとジャクリーンのお抱えだった仕立屋とドレスメーカーである。1950年代アメリカでクレイジーパターンのスーツを着た男性が目の覚めるようなグリーン色をした大柄ペイズリーのドレスを着た女性をエスコートする絵面は都会では決して見られまい。普段は真面目な顔をした大金持ちだけで島に集まり、同類だけで狂乱の夜を過ごしたのだろうか?そんなことを想いながら池袋の居酒屋カウンターでチューハイをあおる全身迷彩柄の僕には「えーせーへー!」た叫んだところで孤立無援。ちっとも森の中に隠れることができないので、仕方なくクリエーション強めの服と曲者スタッフ揃いのインターナショナルギャラリー ビームスに毎朝出勤して、身を潜めているのだ。














