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満足させる家電『リビナヤマギワ』と言う名の海外家電の聖地がかつてあった。

ちょうどミレニアムな頃、生まれ育った鵠沼の実家を壊して2世帯住宅を建てる事となった。当時、湘南スタイルなんて概念が形成される途上で、やや南仏調と言うかコロニアル的と言うか独特な別荘スタイルが海近界隈で流行っていた。なので、海外出張の度にありとあらゆる建築資材をパリの東急ハンズ「 BHV 」で購入、せっせと持ち帰り徹底的に海外の別荘を目指したのだ。ドアノブ、電気スイッチなど、日常的に最も使用頻度の高い物こそデザイン、材質、色を深く吟味した。その甲斐あって数年後、鵠沼の地に不思議なニース風サラダの様な家が出現した。ありがたい事にテレビ CM からスチール広告など、ハウススタジオとしても良く働いてくれた。
さて、ここで問題になってくるのが実用家電である。賃貸ではなく、せっかくフル・オーダーで作っている訳だから全てのアイテムをビルトインしたくなるのである。当時、そんなニーズに応えてくれるのは秋葉原の「リビナヤマギワ」のみだった。その売り場は、圧倒的に美しいデザイン重視の海外家電の宝庫であった。そのリビナで惚れ込んだ美しい形状の家電に合わせて棚の寸法を設定するという作り方である。例えばビルトインの代名詞、ドラム式洗濯機。当時は日本製でのドラム式は皆無で、風呂脱衣所まわりの絵ヅラ的にドラム式は絶対に必要なアイテムであった。当時、輸入ドラム式ならば、ドイツのミーレに行くのが定石であるが、あえてスウェーデンのアスコ社の物を選んだ。何とも美しいフォルム、白の色&質感が最高な逸品であった。ただ使い勝手は・・・。一度スタートすると2H回りっぱなし、途中投入不可、うたい文句の「少ない水量で真っ白!」このシステムのお陰で、デニムとバスタオルを間違えて一緒に洗おうものなら、すべての洗濯物が真っ青に染め上がってしまうのだ。値段も国産品の4倍、定期的なメンテも必要な金食い虫だった。しかし、それを押してでもあまりある美しさが単調な家事に華を添えていた。
次に冷蔵庫。アメリカ好きなら迷わず GE の角丸なあのアメリカン・グラフィティな冷蔵庫に行く所、ここはヨーロッパ魂で Electrolux のツインモーター冷蔵庫にしてみた。冷蔵室と冷凍庫、それぞれに冷却モーターが独立して付いていて何かいいことがあったのかは未だに謎。電気代、騒音2倍のゴージャスな1台であった。ただ白の色が抜群に美しかった。日本には通称シロモノ家電なんて言葉が昔からあったが、全く許せる白色なんて当時は皆無であった。妙に青白かったり無意味に光沢があったり・・・。今でこそ、オシャレ白ものは日本製でもたくさん選べる時代になりましたね。かつてボクらはこんな辛い時代を超えて来たのです。デザインの美しさ以外に海外家電に良い事ってあったのかな?その答えは「リビナヤマギワ」の店舗が、今はもう無い事に現れている。しかし、グッドデザインの海外家電と共に暮らす情緒の安定感は何物にも代え難い、本人にしか解らない魂の充足がそこにあったのだ。