鵠沼中学校に入ると今度は矢沢永吉に夢中になった。『安物の時計』は地味ではあるが大好きな曲である。彼女からプレゼントされた安物の置時計は、彼氏の部屋でいつも同じトーンの音を奏でながら時を刻んでいる。2人の濃密な時間も。そして別れが来た時も。部屋に残された時計からは変わる事の無いチッチ音。なかなか五感に刺さる名曲なのだが、今思えば中学生のボクには十分の一もこの詩の意味を理解出来ていなかったと思う。簡単な言葉しか出てこないんですけどね。
高校~専門学校、このあたりの頃は貸しビデオ全盛期で映画ばかり観ていた。もっぱら戦争物か恋愛物を。男の子ですし、思春期ですし。時計って映画の中でも重要な役割を果たすんですよね、時には役者さん以上に・・・。そして、何百タイトルという同じ様な映画ばかり観ていると自分の泣きパターンがハッキリ解ってくる。戦争物ならこんな感じ。『明日の朝、出兵の日を控えた前日の夜、決して泣かないと決めた彼女は彼と最後の一夜を過ごす。時計の針は無情にも日の出に向けて突き進む。会話の無くなった部屋には秒針の音だけが響き、そしてその静寂はドアをノックする音で破られる。2人の歴史はここで終わり、更新される事の無くなった2人のドラマは回想シーンのみが繰り返される・・・。』はい、ここでドカーンと号泣スタートです。やっぱり決め手は時計なんです。ならばいっその事、時計なんて無ければいいのにと思ってみたりもします。例えば『永遠』という詩的で継続性があり、未来へ広がって行くポジティブなイメージの言葉ですら、それを見事に駆逐するのが『時計』だと思いませんか?蜜の様な時間に対して終わりを告げる装置。野球も恋も何もかも・・・。結構シュールですよね、時計って。だから我が家の置時計は時報とともに鳩が出る、たまに壊れるイタリア製にしています。この真っ赤な鳩が出てくると、全てを喜劇にしてくれるから・・・。
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