本当はダンディな中折れ帽も大好きなのだけれど、編集者にとっては何かと不便なことも多い。なんだか立派そうに見えるし、室内で立ったまま偉い人に取材するときなんて、置く場所がなくて困ってしまう。他にもテーブルが小さな喫茶店、カウンターだけの飲み屋、エコノミークラスの機内etc.・・・。日本で中折れ帽ライフを満喫するには、いろいろとハードルが高いのだ。その点この帽子なら、旅行に便利なのはもちろん、取材のときはくるくる丸めて鞄やポケットに突っ込んでおけるし、小さな喫茶店だったらもはや尻に敷いたっていい。かぶると僕のモンゴリアンフェイスにもいい塩梅の陰影が演出できるし、カジュアルで気取らない雰囲気も、僕のファッションにぴったり合っているようだ。
というわけでここ6年ばかしそればかりかぶっていたら、いつの間にかボロボロになってしまった。汗や雨や脂が混じったシミはもう取れないし、あんまり使い倒すものだからトップの部分が破れてしまい、裏側にフェルトを当てている始末。一応「丸める」と謳ってはいてもやりすぎるとこうなるから、ぜひ気をつけていただきたい。
そろそろ買い換えなきゃと思いながらも、そこそこ高価なものだし、愛着も湧いてしまい手放せない。マナーだから食事やパーティのときは取らなきゃいけないのだけれど、本当はそんなときこそかぶっていたいのだ。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。