2008年の11月某日に僕は入籍した。その後9年間、記念日なんて忘れっぱなしだったけれど、10年目の2018年になってふと思い出したので、普段は苦労をかけっぱなしの妻に(贖罪の意味を含めて)恩返しすることにした。まずは、ニューオータニの庭園内にある鉄板焼き屋を事前に予約。当日は六本木で仕事をしている妻との待ち合わせ時間までに記念のプレゼントを選ぶ。次の10年間も変わらず使えるものがいいと思ったので、某メゾンブランドのシルクスカーフを贈ると(ちょっとベタな気もしたが)決めた。ホテルまでの道すがらショップに立ち寄り、手早く(雑ではなく、直感という意味)妻が好みそうな図柄が入った正方形シルクスカーフを選び、ソファーで会計を待つ。待つ間、僕は自宅から用意してきたエコバッグを広げたりしていた。なぜ?って、目立つから。ホテルの前で「これ、あの有名店であなたの為に買った10周年記念のプレゼントですよ」と言わんばかりに、目立つオレンジ色の紙袋をアホ面でぶら下げた夫が待っている。妻の目線からすれば、成熟を意味するはずの10年記念日に、こんなにもスマートではない夫の行為があろうか?マヌケ夫婦の烙印を押されない為に、僕はプレゼント袋を隠す為のエコバッグを持参したのだ。…が、会計を終えて品物を持ってきた女性スタッフを見て僕はソファーの上で唸った。彼女は綺麗にギフトラッピングされたオレンジ色のスカーフ箱を入れる為に「黒無地」の地味な紙袋を片手に提げていたのだ。遠目には無地であるが、近くで見ると表面にはエンボスが施してあり、そこはかとない高級感が漂っている。世界最高峰のブランドが考える「ブランド丸出しなんて恥ずかしいですよね?」という、この「控えめさ」をホスピタリティと呼ばずして何と呼ぶか?という話でした。高級ブランドとしての自分を知り、そして他人(お客)を知る。痒いところに手が届きすぎ。流石。
REVIEW
手元で馴染んだオーダー品
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