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日本人とサングラス野坂昭如的理論で選んだヴィンテージフレーム

かつて在籍した某雑誌で、上司に「お前の顔はキャラに乏しいから、24時間これをかけてろ」と、カザールのサングラスを買わされたことがある。ホワイトフレームのカザールはさすがに厳しかったが、確かにドラマ性に乏しき我がモンゴリアンフェイス。フラットな坊主頭とくればなおさらである。1980年代だったら安全地帯の玉置浩二よろしくブロンザーを使っていたかもしれないが、現在の私たちは帽子かサングラスをかけて、顔に少しでも陰影をつけるしかない。というわけで帽子とサングラスは僕にとってもはやトレードマーク的存在なのだが、いわゆるツバつきのハットや色の濃いサングラスだと、会食やら取材やらで脱がなくてはいけない局面が多々あって困る。なんだかんだいって中身は典型的埼玉県民につき、生身の自分じゃあ世界のファション業界人と渡り合うことはできないのだ。そういえば数年前に某海外メゾンブランドのクリエイティブディレクターにスーツ姿でインタビューした際、取り巻きの業界人にあからさまにナメられていたのに、帽子とサングラスを身に付けた途端、態度が180度変わったこともあったなあ・・・。
そんな悩みを解決すべく、現在は「ベレー帽」+「少々色を入れたアイウエア」のコンビネーションによって、様々なシーンを乗り切っている。少々無作法かもしれないが、周囲から突っ込まれたときはこう答えるようにしている。「手塚治虫はパーティでもベレー帽を脱がないでしょ? (まあ本当は違うらしいが建前上)」もしくは「野坂昭如がパーティで大島渚を殴ったときもグラサンかけてたでしょ?」と。だから僕がベレー&サングラスで取材やパーティに赴くことは自由!
かつては色々なサングラスを買い漁っていたのだが、最近は50〜60年代のヴィンテージフレームを購入することがほとんどである。アメリカントラッドな気分のときには「タートオプティカル」のスクエア気味フレームを、30’sや80’sスタイルにはフランス製のラウンド気味フレームを、といった感じで使い分けている。それぞれ屋内でもギリギリ〝アリ〟なレベルの色を入れているのがポイントだ。先日フィレンツェの古着屋で80’sのサンローランのジャケットを購入したのだが、店主に「あとはラウンドフレームのサングラスがあれば最高だな」と言われたので、カバンから後者のフレームを出してかけてみせたところ、大いに褒められた。やはりドラマティックな服を着るなら、顔だって多少は釣り合いが取れていたほうがいい。吉川晃司がデビュー当時にサングラスをかけていなかったら、あれほどは売れていなかったはずだ。