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仕事がはかどる喫茶店「純喫茶山下」を計画する

酒が飲めない僕は、拠点を持たないフリーエディターという職業柄もあって喫茶店通いが趣味であり日常だ。いや、むしろいつか自分の喫茶店をオープンしたいくらい大好きだ。だからお店を訪れる際は、「僕にこんな店が経営できるか?」という観点でチェックしてしまう。
たとえば以前 Amvai で紹介した熊本の喫茶店「アロー」。僕が人生最高にリスペクトするお店である。しかしメニューはコーヒー1杯500円のみ。しかも朝8時〜深夜2時の営業時間を定休日なしで30年続けられるかといったら、無理無理無理無理無理無理無理無理。僕は飽きっぽいのである。
たとえば神保町の古書店街にあるウインナーコーヒーの名店「ラドリオ」と、その向かいにあるタンゴ喫茶「ミロンガ」。実はこの2大老舗、オーナーが一緒であり、ユルめに寛ぎたいときや食事がしたいときは「ラドリオ」、より読書や自分の世界に浸りたいときは「ミロンガ」といった具合に使い分けられるという、実に見事な補完関係を築いている。商売っ気なさそうに見えて、意外とうまいことやってるなあ・・・。僕にはそういうセンスはないんだよね。
たとえば神田にある「珈琲専門店エース」。こちらは珈琲や紅茶のメニューの多彩さに定評があり、早朝から近隣のサラリーマンに親しまれているお店なのだが、最近ではフードメニュー「のりトースト」170円に注目が集まり、インスタ映えを狙う若い女性たちで賑わうようになった。僕としてはインスタ映えが全くしない「コンビーフサンド」派なのだが。ちなみにこのお店は仲良し兄弟が経営しているのだが、接客を担当するほうのマスターの心落ち着く美声も魅力的。そのバラエティに富んだ佇まいは「アロー」とは正反対だが、仕事の丁寧さは双璧をなすと言ってもいい。店内に掲げられた手書きのメニューを見ただけで、兄弟の几帳面な性格が伝わってくるだろう。ちなみに僕は早起きが苦手である。
たとえば築地にある「アローマ」。こちらは市場の賑わいからは少々離れた6丁目エリアに店を構える、地元客中心のお店。インスタ映えメニューがないから、東銀座の喫茶「 YOU 」みたいに混雑する恐れがないのがうれしい。ブレンド350円という価格なのに接客を担当するマダムがいろいろと世話を焼いてくれて、気がつくとつい1時間くらい経ってしまうのだ。僕なら350円の客なんかほったらかしである。
というわけで僕のお気に入りの喫茶店を並べてみたが、こうして書き出してみると、「アロー」のみならずどのお店もそれぞれストイックで、そう簡単に真似できるもんじゃないということがよーくわかった。
僕がもし喫茶店をやるならば・・・。きっと最初だけは中途半端に内装やドリップにこだわるものの、次第に「実話ナックルズ系」のペーパーバックコミックやプロ格関連の書籍を置き出して、徐々に生活感に侵食されていくだろう。珈琲はもちろん一杯だてから、つくり置きへとシフト。フードはいちいちつくるのが面倒臭いから市販のルーを使ったカレー一択(汲むだけだから)。お客さんがいないときはきっと客席で漫画を読んでいるに違いない。バイトはかわいい女子大生を求人したいところだが、こんなお店だから若い子は寄り付かず、結局のところ地元のおばちゃんを雇うことになるだろう。
・・・と書いていて気づいたが、僕は実をいうとこういうお店が一番大好きなのだった。僕と似たようなタイプの客ばかり集まりそうな高円寺あたりなら、なんとか成り立つかな?