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男の身だしなみアイテム20代の記憶への呼び水・・・ CHANEL eau de toilette 『CRISTALLE』

むかーし村上龍の小説で、奥歯に物が挟まるとその挟まり具合と過去の記憶が結びつき、映像となってフラッシュバックするという摩訶不思議なフェチ物を読んだ事がある。流石にボクには主人公と同様の技量は持ち合わせていないが、懐かしい系の香水と街中ででくわした時、ギターのハーモニクスのようなポーンと弾けるような記憶が、鼻腔から海馬をかけめぐることならたまにある。文化の学生の頃、バイト先の社長が浴びるようにつけていたバブル紳士御用達のアラミス、90年代、高価なファッション誌には大概封入されていた、めくると香水の香りがする広告ページのインクと混ざったあの香り。2000年前後のカルバンクライン CK ONE は渋谷センター街のにおい・・・とかね。前後左右が一瞬にして当時の空気となり、とんでもなくトンチンカンな記憶までもが沸き上がってくる。バイト帰りに寄った居酒屋で北島三郎が爆音でかかっていたとかそんな他愛もない記憶。嫌いじゃないんだけどね、香水。でも、うちの会社ではトワレは誰も付けない。仕事柄、製品の先上げ検品等の試着を頻繁に繰り返すので服に香りが移ってはうまくない為だ。個人的にはね、つけた瞬間の朝は清々しいんだけど、時間が経つにつれなんだか重ーい気分に落ちて行くんだよねー。特にパフューム系は。つけてた事に疲れちゃうんだろうな・・・。
人はなぜ香水をつけるんだろう?習慣&情緒が落ち着く、気持ちが切り替わって戦闘モードに入る。きっとこの辺りなんだろうな。でも、こんなボクにもマイフェイバリットな香りがある。1974年ココ・シャネルの没後、最初に発売された eau de toilette『 CRISTALLE 』である。22歳でパリをフラフラしていた頃よく使っていた。なのでこのクリスタルの香りは、メトロの構内のにおいやブーランジェリーでクロワッサンの焼ける匂い、古いカフェ独特の、日本では体験出来ないエスプレッソとワインの混ざった様な匂いなど、当時の記憶を呼び寄せる。しかし写真のクリスタルは約25年前にパリで買って実家にほったらかしになっていたもの。よく見れば四半世紀で1.5センチしか使ってないんだな。賞味期限的な物ってあるのだろうか?今51歳のボクが20代の頃に買った当時物な訳だから、あの頃のリアルな記憶への呼び水がまだボトルには5センチ近く残っている・・・。